2017.01.10

【インタビュー】下北沢の革雑貨屋さん Simple Song 中村文彦さんインタビュー

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大量生産、大量消費社会といわれる現代。いわゆる使い捨て文化というものは、その便利さと引き換えに私達のライフスタイルや価値観を大きく変えてしまいました。

安いからと「とりあえず」買うことを辞め、心を込めて作られたものを丁寧に使い続け、自分に馴染んでいく様を楽しむ。そんな風に考え方をシフトできたら気持ちがいいですよね。

今回お話をうかがったのは下北沢でオリジナルの革雑貨を制作・販売している「Simple Song」の店主、中村文彦さん。売られている商品は全て一点物の手作り。同じ形でも「顔」が異なっていたり、人と同じようにそれぞれ個性があり、手に取ると心がほっと温かくなる作品を作られています。








──ものづくりに目覚めたのはいつ頃ですか?

小さい頃からいろいろな物を作るのが好きで、ダンボールでロボットを作ったりしていました。思春期ぐらいになったらそういうのを全然やらなくなってしまったんですけど大人になって生業として何がいいんだろうって考え始めた時に、物を作る仕事だったら僕にも合ってるんじゃないかということで、革の鞄屋さんのメーカーに勤めたんです。そこから独立して今に至ります。



―ものづくりと言うと粘土や木材など色々な素材があると思いますが、なぜ革に興味を?

音楽が好きだったので、好きなミュージシャンが革ジャン着てるのに憧れて真似していました。それが最初ですね。革製品を身につけることが好きだったので、どうせなら好きな素材で何か作る仕事をしたいと思いました。



―メーカー勤務を経て独立しようと思ったのはなぜですか?

自分自身で作って売るというスタイルが一番スムーズに思えたんですよね。大きい組織で作っていると、同じものづくりでも機械的になってしまうんです。心を込めた手作りなのに、全然心が込められていない矛盾がありました。作るもの全部に責任を負ってやっていた方がやりがいにも繋がると思いましたね。



―作品を作るときにこだわってることはありますか?

革製品を選ぼうとされる方は、やっぱり長く使おうと思って買われる方が多いので、いかに長く使ってもらえるかを一番に気にしながら作業しています。



―長く使ってもらえるものとは?

まず一番に丈夫で壊れないということ。ただ、革の丈夫さは革の厚みに比例するので、厚くすれば丈夫にはなるんですけど使い辛いものになってしまいます。使い辛いと結局使わないじゃないですか。そことのせめぎ合いでいつも頭を悩ませていますね。ある程度耐久性があって、なおかつ機能性のある使いやすい物になるようにということです。






―開店から4年が経ちますが、何か心境の変化はありましたか?

作るものに関して言えば、最初の頃は自分が欲しいものを作ろうとしていたというか、そうしていくしかなかった。4年経って未だに自分本位な物を作ってるんですけど、お客さんからの声を聞いてきて、色んな使い方を想定して考えるようになってきましたね。お客さんも人ぞれぞれで使い方とか好みとかあるので、全てに対応するのは無理なんですけど、なるべく取り入れるようにしたいなという気持ちになりました。



―どんな要望をいただくんですか?

トートバッグだったら肩にはかけないとか、手提げで持ちたいとか。
中にポケットがないと駄目だとか、中身が見えなくなるようにフタがついていないと嫌だとか。それら全てに対応したものを作ろうと思えば作れるんですけど、ごちゃごちゃしすぎたデザイン性に欠けるものになってしまい、逆に買ってもらえなくなります。

僕のこだわりといったら大まかな形だけなので、まず形ができて、そこにどんな機能性を入れていくかってことなんですけど。蓋を付けてみて、やっぱり潔さがないなと思って削ったりだとか。



―潔さってどんなものでしょう?

本当に感覚でしかないんですけど、パッと目を惹くというか、使ってみたいと思ってもらわれないと駄目なので、その後で「あ、こういう機能もあるんだ」っていう。機能性を全面的に推しちゃうと、あまり目を惹かないような気がするんですよね。



集中できる作業空間と、売る為の空間がうまく同居した街 下北沢








―イメージはどうやって湧き出てくるものなんですか?

それが僕も毎回本当にわからなくて(笑)どうやって考えてるんだろうと思うんですけど。



―よくお散歩をされながら考えてらっしゃるとか。

そうなんです。じっと考えてても駄目だし、歩くのをプラスすると考えがまとまるんです。手を動かして、ここで考えられたら最高なんですけどね。それは僕にはできない。街の中にある建築物などからイメージする場合もありますね。



―下北沢でお店を開いたのはなぜですか?

元々住んでいて、土地勘があったというのが一番大きいです。お店の場所を探そうとして、ここが一番最初に出てきた物件なんですよね。それですぐに決めてしまったので、この街はどうかとか比較をしていなくて。ただ、下北沢って人の賑やかさもあるんですけど、どこかのどかさも感じられて。僕の場合、集中して作る空間と、売らなきゃいけない空間の2つがうまく同居した街なのかなって思っています。



―物件を見たときにビビッとくるものがありましたか?

僕一人で作って、一人で売っていくっていうコンパクトなサイズ感にピッタリだと思ったんです。この立地って、すごく入り辛いと思うんですよ。そんな中でもちらほら入ってきてくれるお客さんがいるので、そういうのは下北沢ならではなんじゃないかとも思います。小さな個人のお店が多いから、そういうのを散歩しながら探してらっしゃる方が多いのかなと。








―どんなお客さんがいらっしゃるんですか?

ホームページを見て訪ねてきてくださる方が多いです。年齢層は大学生というよりかは社会人ですね。一番多いのは外国人です。街ぐるみで今すごい多いと思います。日本人だと思ったらアジアの方だったりしますね。



―革製品における「アジ」ってどんなものだと思いますか?

例えばニット素材の服なんか、着ていくうちに消耗していくのがちょっと寂しいというか。革に限らず、天然素材ってそういうものが多いんですけど、使っていくうちにその表情が変わっていくっていうのを楽しんでもらいたいんです。僕の作品はお客さんが使ってもらうことによって、はじめて完成されるんです。新品が一番カッコ悪い状態というか、一番使い辛い状態だと思っていて。使うことでその人のライフスタイルに馴染んでいくものだと思います。



人に使ってもらって、はじめて完成する








―お仕事をしていて、どんな時に喜びを感じますか?

購入したものを持ってきてもらえれば僕の方でオイルメンテナンスをしているんですよ。その時は良かった安心したっていう気持ちに近いんですけど、使ってもらっていることが確認できるので嬉しいですね。



―自分の子ども達が「元気にしてるよ~」って会いに来てくれてる感じでしょうか。

本当にそうですね。お客さんから言葉を頂くことって、購入した直後が一番多いんです。それももちろん嬉しいんですけど、その後が不安なんです。ちゃんと使ってもらえてるか、買った直後はもちろん皆さん使いますけど、その後長く使ってもらえるか不安なんで。ある程度時間が経ったあとに「オイル塗ってください」と持ってきていただくと嬉しいですね。


―休みの日は何をして過ごしているんですか?

休日はお散歩してプラプラしてる感じです。意味もなく井の頭線の沿線を歩いたりすることもありますね。



―最後に今後の目標を教えてください。

開業した時に100種類の商品を作ろうとやってきたので、引き続き達成できるまで作り続けたいですね。今50種類過ぎた所ですが、今後はバッグを増やしていきたいです。その時々で思いついたものを作ってきたんで、自分でも何ができるかわからないんですけど。とりあえず今後はバッグを中心に作る時期かなと思ってます。でも、そうなるとこの店だと狭くて並べられないので、もうちょっとだけ広い所に引越せるといいなと思います。





「一番思い入れのある作品はどれですか?」と聞くと「全部ですね」と答えてくださった中村さん。愛情たっぷりに作られた革製品の中から自分のお気に入りを探したり、大切な人への贈り物を選んだりしても楽しいですよ。いいものを長く大事に使って、少しずつ自分色に馴染んでいく過程を楽しんでみてはいかがでしょうか。






  • Simple Song

  • 住所東京都世田谷区北沢2-30-6 CoopMK203
  • TEL03-6407-1494
  • 営業時間12:00~21:00
  • 定休日木曜日
  • URLhttps://www.simple-song.com/




ライター

ローカルデータ編集部

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