2017.01.12

【食レポ】あんみつ珈琲とノスタルジックな純喫茶「世田谷邪宗門」

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北沢緑道周辺をお散歩中に見つけた純喫茶「世田谷 邪宗門(じゃしゅうもん)」。寺院のような怪しげな名前のこのお店は、若者達の集まる商店街から少し離れた、下北沢と三軒茶屋の間、静かな住宅地の中にあります。




訪れてみたはいいものの、ドアが閉まっている喫茶店ってちょっぴり入りづらい。入ろうかどうしようか考えあぐねいていると店内から出てきた奥さんがニッコリと笑顔で挨拶をしてくれました。その優しげな雰囲気から「このお店はあったかい場所だ」と確信。

勇気を振り絞って入店すると・・・





店内を多い尽くすレトロなインテリアに圧倒!BGMは坂本九さんの歌謡曲「見上げてごらん夜の星を」が流れ、まるで何十年も前にタイムスリップしたかのような不思議な気持ちに。ここは本当に2016年…?











アンティークランプや、火縄銃、鎖鎌などなど、資料館がひとつ開けそうなラインナップ。ここにあるインテリアはみんなマスターが趣味で集めたものなんだそうです。「世田谷のボロ市はよく行きました。昔はいいものがいっぱいあったんですけど、今は全くありませんね(笑)」とマスター。







マスター(邪宗門では門主と言う)の作道明(さくみちあきら)さん。

初めての一人喫茶店で少しばかり緊張の面持ちで座っていると、「何か見ていらしたの?」とニコニコ人懐っこく声をかけてくれ、メニューと一緒に邪宗門が掲載されている書籍を持ってきてくださいました。







「渋カフェ」。うん、確かにコーヒーじゃなく「珈琲」と書きたくなる渋さがここにある。

他にも邪宗門を取り上げた物を次から次へと出してくれます。漫画「下北なあなあイズム」作者の石坂啓さんはここでアルバイトをされていたんだそうで、作品の中にお店が登場していました。










癒し系のマスターにほっこりしつつお話を聞いていると、TVアニメ「境界の彼方(きょうかいのかなた)」の舞台になっていることが判明。アニメ公開後は国内海外問わず、ファンが多く来店されたそうです。

「中国、韓国、台湾、アメリカ。そんな所からもわざわざいらしたの。」そう語るマスターはとっても嬉しそう。

アニメ内で登場する「新堂写真館」の設定画。外観も、内装もそっくりだ。探訪者さんからのメッセージが書き込まれたノートはもう5冊目になるそう。外国語で書かれた感想もたくさんありました。







お喋りに夢中になって、注文を忘れていました。おすすめは何かと尋ねたところ、ここでしかいただけない「あんみつ珈琲」を勧めてくれました。黒蜜ではなく珈琲をかけて食べるのが特徴なんですって。







珈琲を注文すると、一杯一杯その都度豆を挽いてくれる。作り置きをしているチェーン店では味わえない、おもてなしをされている感が嬉しい。もちろんあんみつにかける珈琲も入れ立てホヤホヤです。

「黒蜜の代わりに珈琲なんです。全部かけてかき混ぜちゃってください。」

ぐるぐる混ぜてからいただくと、珈琲の苦さと小倉の甘さが溶け合ってとっても美味!ベースはアイスあんみつですが、珈琲が加わることでいい感じにしまりが出てます。おかわりしたいくらい。







近くを散歩をしていたと伝えると、「これ持って回ってみてください。記念碑が建ってますんで。」と手渡してくれたのが一枚の地図。なんとマスターと常連さん達は、この地図を作っている北沢川文化遺産保存の会のメンバーなんだそうです!北沢川緑道にある文学碑はマスター達によって建てられたんだとか。ちょうど北沢川緑道を散歩してきたばかりで(しかも文学碑を撮影していて)、実際に活動をされている方々に出会うとは、素敵な偶然です。

地図上で赤く記されているのが文学者旧居、青く記されているのが芸術家旧居。代田、北沢、代沢は都心から程よく離れた都市と田園の縁辺で、書き手にとって好ポジションなんだそうです。下北沢駅周辺に近代文学の担い手がこれほど多く住居していたとは知りませんでした…。街を歩いては調査して、そこでまた別のお話が聞けたりして、気が付けばこんなに増えたんだそうです。







もう一つ興味深かったお話が古くから伝承されている巨人伝説。「代沢とか駒沢、北沢には沢があるでしょ。全部、ダイダラが歩いた足跡なんですよ。民話です。」と話すマスター。ダイダラボッチ(デイダラボッチ)はジブリ映画「もののけ姫」でも出てきて、日本人にとっては馴染み深い名前ですが、こんな身近にその存在を感じられるスポットがあったなんて。地図にも「代田のダイダラボッチ伝説 長さ約百間の右足」として記されています。「代田」の名は、ダイダラボッチの伝説から来ているんですね。妖怪にちなんだ地名とは、お茶目ですね。


森鴎外さんの娘で、小説家でエッセイストの森茉莉さんは邪宗門に毎日通っていて、特に入店してすぐ左手の窓辺の席がお気に入りだったんだとか。森茉莉さんが眺めていた景色に思いを馳せながら、ここで執筆作業をしたいですね。









奥の部屋見ました?と促され、覗いてみるとそこには奥さんが趣味で集められたという美空ひばりのコレクションがたくさん。お気に入りが詰まった宝石箱みたいなお部屋です。映画の監督や役者、身内の方がよくここで集まっていたそうです。



今回訪れたのは土曜日の14時頃。お客さんはお一人で来られている男性の方や、常連さん、女性2人組、奥様方と幅広く、笑いの絶えないお店でした。新参者も暖かく迎え入れてくれるので、女性一人でも大丈夫。むしろ一人で来てほしい。珈琲とミルクが溶け合うように、自然と輪の中に入っていけますよ。

創業から50年間下北沢を見守ってきた邪宗門は「古き良き昭和」という言葉を絵にしたような空間でした。いつでも優しく迎えてくれるマスター、気が置けない仲間達、そして美味しい珈琲。時が移ろうともここでは当時の暮らしが変わらずにあるんですね。

SNSの発展によってリアルタイムに繋がりを感じられるようになってしまった現代の人間関係とは違う、場所が人と人とを繋いでいる、昔ながらの温もりがここにはあると思いました。

ドアの閉まっている喫茶店ってちょっぴり入りづらい。でも、勇気を出して一歩を踏み出してみてください。素敵な一時があなたを待っていますよ。









ライター

ローカルデータ編集部

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