2017.02.04

【インタビュー】「僕ら世代でこの一帯を盛り上げていきたい」下北沢の老舗カレー店「茄子おやじ」2代目店主西村伸也さんインタビュー:オーナー編 vol.5

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カレー激戦区の下北沢で26年間地元の人に愛され続け、この土地のなくてはならない名店として人気の「茄子おやじ」。昨年12月に創業者の阿部さんが惜しまれつつ現役を引退されました。現在お店は元々スタッフとして働かれていた西村伸也さんに受け継がれています。オーナーインタビューでは、お店を継いで1ヶ月を迎える2代目店主西村伸也さんに茄子おやじとの出会いから、お店を継ぐことになったときの心境や今後のことについてお話をうかがいました。








茄子おやじとの出会いから、お店を受け継ぐまで


──西村さんはもともとスタッフとして茄子おやじで働かれていたそうですね。どうして茄子おやじを選ばれたんですか?

僕は音楽をやっていて、ライブで下北沢に来たときによく茄子おやじでカレーを食べていたんです。将来カレー屋をやりたいと考えて、どこで働こうかなと探していたときに、知り合いの知り合いから「茄子おやじでスタッフを募集してるよ」と教えてもらって。親父さんのつくるカレーが大好きだったので、応募して働きはじめました。



──そこで阿部さんからカレーづくりを学んだんですね。

親父さんと奥さんの千代子さんのもとで3年間、みっちり鍛えられました。茄子おやじのお店自体がとてもアットホームな雰囲気をもっているので、みっちりと言っても厳しいものではなく、優しく教えていただきましたね。2人は僕からしたら家族みたいなものです。



──阿部さんからお店を継いでほしいと頼まれたのはいつぐらいだったんですか?

去年です。引退すると決まったのも急だったんですよ。親父さんは継ぐ人がいなかったらお店をたたむ気だったみたいですが、僕が声をかけられて。僕自身は自分でお店をやりたかったんですが、このお店が大好きだし下北沢からなくなってしまうのはダメだと思ったので、継ごうと決意しました。

茄子おやじは今年で開業から27年目です。下北沢はお店の移り変わりが激しいじゃないですか。大手ばかりが増えてしまって、個人店がどんどんなくなってきている。再開発も進んでいて、下北沢の古き良きものがなくなっていってる気がして。だから絶対たたんじゃいけないなと思いました。





──お店を任せると伝えられたときはどんな気持ちでした?

26年続けてきたお店を、まだ3年しか働いていない僕に「継いでくれないか」と言ってくれたときは本当に嬉しかったです。親父さんのつくるカレーが世界で一番好きなので。僕ほぼ毎日茄子おやじのカレーを食べているんですが、飽きないんですよ。おいしいものでも毎日食べていたらさすがに飽きが来ると思いますが、ここのカレーは全く飽きが来ない。僕の体はカレーでできているようなものです(笑)まかないでカレーを食べるので、1日1回は必ずですね。3年間ほぼ毎日食べています。



──たまに違うものを食べたくなったりしないんですか?

ないですね。あるとしたら風邪ひいてるときくらい(笑)



──お店を継ぐにあたって、プレッシャーもあったのでは?

プレッシャーはありましたが、楽しみのほうが大きかったですね。働いていると、「もっとこうしたら面白くなるんじゃないか」というのが出てくるじゃないですか。そういうものを出していって、徐々に親父さんの色と僕の色を融合していきたいなと思っています。親父さんの味は守りつつ、何年か経ったら僕の味が出てくると思います。



──茄子おやじで働く前にも飲食の経験が?

カフェで働いたり、はらドーナッツで店長をやったりした経験があります。ドーナッツ屋になろうとは思わなかったですね(笑)小さい頃からカレーが大好きで。カレーって食べると幸せになるじゃないですか。






同世代で地域を盛り上げていく


──西村さんの色は今どういった形で出していってるんですか?

まずは目に見える部分ということで、内装を少しずつ変えていっています。ランプとか、レコードとか、花もそうですね。すぐ近くにいつも仲良くしてもらっている「 milcah(ミルカ) 」というお花屋さんがあるんですが、そこでドライフラワーをつくってもらっています。アイビーもそうですね。



──地域のお店同士の絆が深いんですね。

僕は同じ世代のON THE WAY,の福田君とも、とても仲がいいので、僕ら世代でこの一帯を盛り上げていけたらなという想いがありますね。福田君はよく来てくれるんです。僕も朝の仕込みが一段落したら、毎朝彼のところにコーヒーを飲みに行っています。こんなことを一緒にできたらいいねと夢を語ったりしますね。




▲西村さんのお母さんが毎週送ってくれている、地元宮崎の大根を使った田舎漬け。優しい味がスパイスのきいたカレーにぴったり。


西村さんと音楽


──お店の看板にある「カレーと音楽とコーヒー」は今後も引き継いで行かれるんですか?

カレーと音楽とコーヒーは僕のテーマですね。スタッフみんな音楽好きで、レコードで流しています。レジ横にターンテーブルが置いてあるんですよ。レコードを変える動きもパフォーマンスの一種ですね。お客さんも興味を示してくれます。こういう古いものを大切にしていきたいです。


──音楽活動はどんなもの?

アコースティック寄りなバンドでアコースティックギターとボーカルを担当しています。年末から引き継ぐにあたってとてもバタバタしていたので、音楽活動をやれていなかったんですが、年が明けたらスタッフも落ち着いていい流れになってきたので、2月から活動を再開します。


──今後お店でも音楽に関連したイベントをやられたりしますか?

ライブをやりたいんです。カレーフェスのときに曽我部恵一さんのアコースティックライブをここでやっているんですよ。なので、たまにはイベントでやっていきたいと思ってるので。

曽我部さんはたまにカレーを食べに来てくださっていて。雑誌などでも茄子おやじの名前を出してくれています。こういった繋がりは親父さんが26年培ってきたところなので、大事にしていきたいです。







▲西村さんお気に入りの名盤、ニッキー・ホプキンスの「夢見る人」をかけていただきました。


──西村さんは普段どんな音楽を?

かっこいいと思ったものはなんでも聴きます。ジャズもソウルミュージックも好きですね。お店に置いてあるレコードは全部僕のコレクションなので、そのときの気分で好きなものをかけています。レコードを見たお客さんから「僕も好きです」って言ってもらえて、そこから会話に繋がることもあるんですよ。









──下北沢でよく行かれるお店はありますか?

山角という定食屋さんには、仕事が終わったあとによく食べに行きます。すごいいいお店ですよ。お酒も飲める定食屋さんで、夜遅くまでやっています。下北沢のカレー屋さんだとアンジャリが好きです。インド系のカレーなんですが、とてもおいしいですよ。



──何かマイブームはありますか?

カメラです。いつもデジタル一眼レフを持ち歩いて、風景や人を撮っています。去年単焦点レンズを買って。単焦点は自分で構図を決めないといけないから、それが楽しいですね。Wi-fiで携帯に飛ばせるので、パッと撮ってすぐインスタにあげています。1日1枚載せていると、だんだんネタがなくなってくる(笑)ネタ探しも楽しいんですけどね。今日はなに撮ろう、みたいな。




▲カフェ時代の後輩さんも一緒に働かれています。お店を引き継ぐときに西村さんが声をかけたそうです。


──インスタを拝見しましたが、お仕事終わったあとに男性スタッフだけでドーナッツパーティーをやっていましたね。

今ガッツリ入ってるスタッフがみんな男なんです。長男、次男、三男みたいな感じです。仕事終わったあととか、仕込みが終わったあととかにケーキを食べたりしています(笑)カレー食べてると、甘いものが食べたくなるので。




▲お店を受け継いだときにお友達からいただいたという絵画。









親父さんの名を汚したくない


──お店を経営していくうえで、どういった点に気を使っているんですか?

スタッフにバイトのような気持ちで働いてほしくないと思っています。みんなでお店を守っていくという想いを持ってほしくて。やっぱりこのお店を好きな人と働きたいんです。お金を稼ぐのも大事ですが、働いていることに喜びをもってほしい。ここにいるスタッフはみんな働く前からこのお店が好きで、集まってきてくれているのでとても助かっています。こういうところをしっかりさせないと、お店の雰囲気も悪くなっちゃいますから。僕は親父さんの名を汚したくないんです。来てくれたかたに「お店よくなったね」と言われたいですね。

26年続いたお店を継ぐというのはやはりプレッシャーが大きいです。継いだ後の初日なんてカレーを出すときにめちゃくちゃ緊張していました。お客さんの反応がすごく気になっていたんですが、常連さんたちもお世辞抜きに「おいしい」と言ってくださって。

僕、ちょっとだけ仕込みのやりかたを変えてるんですよ。そこに気づいてくれた数名のかたに「よくなったね」と褒められて、すごく嬉しかったです。飲食をやっているかたも多いので、わかる人にはわかるみたいです。怖!と思いますけど(笑)お客さんが入ってくるのは以前よりも嬉しく感じます。このお店はそこまで広くないので、働きながらお客さんの表情が見えるのでそこがいいですね。カレーを食べるときってみんな笑顔なんですよ。毎日お客さんの嬉しそうな顔を見ながら働けるのはとても幸せです。



──カレーって子供から大人までハッピーにさせてくれますもんね。

小さいお子さんだとここのカレーは辛いと思います。でもお子さん連れでご家族でいらっしゃいますね。なのでお子さんが食べるときは生卵を落としたり、コーヒーミルクをかけて味をまろやかにしたりしています。生卵だとかなりマイルドになりますよ。

茄子おやじは今年で27周年なので、30周年までには親父さんではなく僕の茄子おやじの顔になっていければいいなと思います。素敵な親父さんになりたいと思います。まだ親父という年齢ではないので(笑)いい親父になっていきたいですね。

親父さんは雑誌の取材を断っていたので、今後は取材依頼を受けつつ、下北沢以外にもっと広めていきたいなと思います。インスタグラムも1日写真1枚は載せていこうと思っています。



インタビューを終えて


西村さんの紡ぐ言葉のひとつひとつから、親父さんから受け継いだお店をとても大切にされていることが伝わってきました。26年間育んできた親父さんの色を残しながら、ゆっくりと時間をかけて西村さんの色をのせていく。懐かしさと新しさが混ざり合った茄子おやじが今後どのように進化していくのかますます楽しみです。



  • 茄子おやじ


  • 住所東京都世田谷区代沢5-36−8 アルファビル1F
  • 最寄り駅下北沢駅南口より徒歩5分
  • TEL03-3411-7035
  • 営業時間12:00~22:00
  • インスタグラムhttps://www.instagram.com/nasuoyajicurry/



ライター

ローカルデータ編集部

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