2017.02.15

【インタビュー】下北沢のスタイリッシュな花屋さん「milcah」山田英輔さんインタビュー

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下北沢の喧騒から少し離れた裏道にひっそりとお店を構える花屋「milcah(ミルカ)」。あえて威圧感を演出しているという看板のない外観、黒で統一された内装、鮮やかな存在感を放つ花々。洗練された世界観に惹かれ、デザイナーや画家といったアーティスティックな職業の方も多く訪れるそう。今回はオーナーの山田英輔さんに花屋を始めようと思ったきっかけや、花が人に与える影響などについてお話をしていただきました。











──山田さんは青森のご実家が花屋だったそうですね。どうしてご自身もお店をやろうと思われたんですか?

大学の語学留学で行ったフランスで、花屋が人々の生活に密着しているのを見て、「かっこいいな」と思ったことがきっかけでした。向こうでは買い物のあとに花を買って帰って、食卓に飾るのが当たり前で。女性だけでなく男性も普通に買っていかれるんですよ。日本でそういうことは滅多にありませんよね。常に花が生活の一部にあるのがいいなと思いました。



──店内の内装を黒で統一されているのはなぜですか?

花屋なので人が主役でもなければ、インテリアが主役でもありません。メインである花以外を黒やダークグレーといった彩度の低い色で統一することで存在感を強めています。黒は暗いイメージを持つ方も多いと思いますが、黒子という言葉があるように脇役としていい働きをする色なんです。









──花や葉の可能性を大切にされているそうですね。可能性とはどういったものなのでしょうか。

普通の花屋ですと、葉は使い道がなく処分される対象になりますが、葉も花として生まれてきているからには、見せ方によって主役になれると思います。同じ花でも葉の形が異なりますし、それぞれの個性を見ていいなと思ったものを仕入れるようにしています。



──花は「タイミング」、「産地」、「生産者」が大事なんだとか。

花は自然のものなので、必ずしも決まった時期に出荷されるとは限りません。そのため、一年を通して移り変わっていく産地を頭に入れておくことが大切です。例えば「この花が欲しい」と言われたとき、現状で市場にはなくても「来月にはあの産地から出るだろう」と先読みができます。出荷時期は自然災害や環境によっても左右されるので、状況を常に把握するようにしています。







──「milcah」という名前の由来は何でしょうか?

僕はクリスチャンの大学に通っていたんですが、聖書を勉強しているときに見つけた「milcah」というワードがなぜか頭に残っていたんです。後々調べたら人物の名前だということがわかりました。特に何をした人でもありませんが、男性であり女性でもある、中性的なところが花に合うと思いました。

花屋というと女性が行く場所というイメージがあり、男性は行きづらいですよね。でも本来、花はどちらの性別にも対応できるものだと思います。うちは男性のお客さんもサッと買っていけるような商品ラインナップや、雰囲気づくりを大事にしているから入りやすいみたいで。毎週必ず花を買われる方もいらっしゃいますし、花よりも枝なんだよねという方もいて。お店や自宅、事務所など飾る場所は様々だと思いますが、その人の生活の一部になっていると思うとありがたいです。



──店名が聖書から来ていたり、季節のテーマが北欧神話の女神にちなんだものだったり、花と歴史をリンクさせているのには何か理由があるのでしょうか。

大学で勉強していたというのが理由です。花は宗教画で頻繁に登場するモチーフなんですよ。花を紐解いていくと様々な歴史が見えてきて、ロマンがあります。僕はクリスチャンではありませんが、聖書やギリシャ神話、日本書紀といった歴史書を読むことが昔から好きで。書物を編纂(へんさん)するまでの背景を辿りながら、何か花に絡められることはないかと探しています。

例えば「ククノチ」という商品名があります。これは古事記に登場する木の神「ククノチ神」からとっています。大々的に表明してはいませんが、僕らの中で「このシリーズはククノチで行こう」と言ったりしています。



──身近にある花も調べてみると色々な歴史があるんですね。お店に並んでいる花は山田さんの好みも反映されているんですか?

日本の花が好きなので、和花も仕入れるようにしています。あとは扱ってみたいと思ったもの。例えばチューリップはA級、B級、C級と等級があるんですよ。A級の花は品質がとてもいいので、皆それを買いたがります。でも市場の人から「B級品なんだけど、形も色もいいからどう?」と勧められたときはあえて買ってみるようにしています。そうすると「B級品でもこういうのあるんですよ」とお客さんに新しい提案ができるんです。



──どんな花が好きかわからない相手に贈る場合は、アドバイスしていただけますか?

その人の雰囲気を重視してお作りしますよ。でも雰囲気と好きなものは必ずしも合致するわけではないので、持ち物のテイストを参考にしたりもします。貰った人に「いいものをもらった」と思ってもらいたいので、ヒアリングを大事にしています。花屋さんだからといって花の知識ばかりあっても仕方がないので、建築や食などいろんなところに引き出しを多く持つように意識しています。









──お客さんはどういった方が多いんですか?

他の花屋に比べて、美容師さんやデザイナーさん、画家さんといった美意識の高い方が多くいらっしゃいます。あえて挑戦的な色の組み合わせをディスプレイすることがあるんですが、それを見て「こんな濃い組み合わせ、普通ならやらないけど、花だったらいいね」と色の組み合わせのヒントをもらえると言っていただけると、とても嬉しいです。

僕は聞かれたことに対して、答えられることは全て答えるので、そこをよく思ってくださっているのかもしれません。回転率の高い花屋だと買って帰るだけで終わりですが、僕は「この花はこの後どうなるの?」と聞かれたらこうなりますよと伝えたり、こういう花瓶に合いますよとアドバイスをしています。だから皆さん滞在時間が長いんです。基本的にメールや電話でやりとりをするので、意外と来店される方が少なく、じっくり話せる時間があります。

ご近所の皆さんとは仲良くさせていただいていて、 茄子おやじさんポタジェロネさん もよく来てくださいます。どんな花瓶に飾るのか知っているので、それに合わせて仕入れたり、好みの花が入荷したときにお伝えしたりしています。








──毎日花と対峙しているといろいろなものが見えてくるとか。

最近感じるのが自然環境です。毎年必ず同じものが出てくるんですが、ここ数年で花たちに変化があり、ニュースで見るよりも肌で実感しています。震災の影響で土壌が汚れてしまうと育ちにくくなったり、奇形がでてきたり、僕らが思っている以上に花は自然環境の影響をもろに受けているんです。そういった花を仕入れて少しでも被災地の支援になればと思います。



──花は思っている以上に繊細な生き物なんですね。花を扱っていて不思議に思うことは何かありますか?

水を吸わせたときに切り花がゆらゆらと勝手に動いたり、ポピーが花開くときに殻が落ちたり。そういう姿を見ていると、言葉は喋らなくても生きているんだなと実感します。最後の最後まで咲ききって、枯れていくところが見れると、気持ちがいいですね。



──花を生活に取り入れることでどんな効果があると思いますか?

「花を飾ることで生活の仕方が変わった」とお客さんに言われました。花を飾る前は毎日同じことを繰り返す生活だったのが、花を置くと外出前で慌ただしくても「あ、水換えてやんなきゃ」と、生き物として気にかけるようになり、「水を変えてやってから家を出たぞ」といった充実感に繋がっていったんだそうです。

花を取り入れて感覚や考え方が変わったと言われるのは男性が多いですね。学生の頃から花を飾ることに興味のある男性はあまりいないと思いますが、20代後半から30代になってきて、飾ってみようかなと思い始めた方のとっかかりになれたらいいなと思います。



──プライベートについて教えてください。下北沢でよく行かれるお店はありますか?

COFFEA EXLIBRIS のオーナーさんと仲良くさせていただいています。スペシャルティコーヒーにとても詳しいですよね。今までコーヒーは全て一緒だと思っていましたが、飲み比べしてみると全く違うことがわかって。コーヒー豆も自然のものなので、話をしていて勉強になります。



──最近のマイブームは何かありますか?

最近は和室ばっかり見ています。サザエさんのような家を見るのが好きで(笑)その家に合う花を自分の中で考えたりしています。畳や日本家屋の柱に合うような洋花もあるんです。ドライフラワーもそうですね。意外なものがあるとお客さんも面白いかなと思います。庭もとても好きで、畑仕事をしたいと思うことがあります。



──最後にお店を通して伝えていきたいことを教えてください。

花は生き物だということを伝えていきたいです。花を買って最初は大切にしていても、最後は物のような扱いをしてしまうと思うんです。花屋になって15年、そう感じることがありました。まずは生き物だということを知ってもらって、花を生活に取り入れたときの効果をこの店を通して伝えていきたいです。

生花以外の引き出しも皆さんに持って欲しいですね。最初からドライでもいいんですが、最初は生花で飾っといてゆくゆくドライにするというように、2つとも経験しているほうが2度楽しめると思います。それを伝える方法としてワークショップを定期的に開催していきたいと思います。





インタビューを終えて



花は言葉を喋らない分、生き物であることを忘れてしまう瞬間があるかもしれません。でも「花も人も同じ」だと言う山田さんのお話を聞いて、命あるものなんだと実感しました。生花の間は生き物を世話しているという感覚を持ち、枯れた後はすぐ捨てるのではなくドライフラワーにして長く大切にしていきたいですね。今の暮らしの中で何か物足りなさを感じている人は、花を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。きっと、心や生活の潤いに繋がるはずですよ。





  • milcah(ミルカ)


  • 住所東京都世田谷区代沢5-36-12
  • 最寄り駅京王電鉄・小田急電鉄「下北沢」駅 南口から徒歩4分
  • TEL03-5787-6699
  • 営業時間11:00~20:30
  • 休業日木曜日、年末年始、お盆
  • URLhttp://milcah.jp/




ライター

ローカルデータ編集部

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