2017.03.16

【インタビュー】入居者を幸せにする空間プロデューサーを目指していきたい。池上正芳さんインタビュー 前編

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リノベーションタイムが施工した有孔ボードが一面に設置されたお部屋。そのマンションの大家さんである、池上不動産管理株式会社の池上正芳(いけがみ まさよし)さんにお話をお聞きする機会に恵まれました!
なぜリノベーションを取り入れようと思ったのか、高家賃でも入居者に喜ばれる賃貸経営とは何か。池上さんの経営哲学について、じっくりとお話をうかがいました。



▲リノベーションされたワンルーム「WHITE PEG」。詳細はこちら



大家業を楽しんでもいいんだよ、というきっかけをくれた講演会



──池上さんが大家さん(オーナー)をやろうと思った経緯を教えてください。

僕は昔、漬物のメーカーと問屋の仕事をしていました。経営が厳しくなって辞めてしまったんですが、何か自分の事業をやりたいと考えていました。その頃、父が不動産のオーナーをやっていて、もう高齢になってきているし、そろそろ自分が関わった方がいいのかなと考えて、いろんな講演会に行き始めたんです。

中でも一番刺激を受けたのが、大家界のカリスマと言われている方の講演会でした。プロジェクターには彼の物件に住んでいる入居者さんの楽しげな笑顔が投影され、「僕はこの笑顔を見るのがたまらなく好きで、オーナーをやっているんですよ」とおっしゃっていて。僕はそれを聴いて「住んでいる人の笑顔っていいなぁ」と思ったのと同時に、自分もこんなふうに賃貸経営をやっていったら楽しいんだろうなって思えたんです。



──その大家さんの講演会がきっかけとなって、賃貸経営に対して可能性を見つけられたんですね。その方は主にどんなことをされていたんですか?

その方の物件ではバーベキューパーティーを開いたり、屋上でヨガ教室をやったり、入居者同士がコミュニケーションを取れるようなイベントをやっていました。

他にも入居するときに壁紙のクロスの色が選べるなど、魅力的な空室対策をやられていて。僕自身も、なにかやらなきゃいけないなと思いました。それで最初は鏡と、壁紙に色をつけました。これだけでもとりあえず差別化になるんじゃないかなと思ったんです。




▲穏やかな物腰の池上さん。言葉の一つひとつから優しさが伝わってきます。



──皆さんいろいろな空室対策をされているんですね。

今は変わってきていますが、一昔前の大家さんは不動産屋に管理を任せていて、自分自身で積極的に動く人が少なかったんですよね。だから僕も最初の頃は自分で動いちゃいけないという意識が強かったんです。だけど、動かないと部屋が決まらない。部屋が決まらないと苦労するだけだし、自分から動いた方がいいんじゃないかと思うようになりました。

それで、たまたま行った賃貸住宅フェアで知り合ったリノベーション業者に、部屋の施工をお願いしたんです。一番最初の部屋はピンクのクロスにシャンデリアをつけた、いわゆる姫部屋を作りました。これだけやれば入居者が決まるだろうと思ったんだけど、いつまで経っても決まらなかったんですよ。



──こだわった部屋だったのに、どうして決まらないんでしょう?

いくらいい部屋を作っても、部屋の良さをわかってくれる不動産屋の営業担当がいないんです。良さを理解していないから、お客さんに魅力が伝わらない。逆に言えば、部屋の特徴を一番理解しているリノベーション業者が仲介までやればうまくいくと思いました。



──いい部屋を作るだけでなく、仲介もセットになっている必要があるんですね。他にはどんなお部屋を?

当時は壁紙を変えるだけのリノベーションが多かったんですよ。でもそれじゃあつまらないし、どうせなら凝った部屋にしようと思っていて。そんなとき、たまたま下北沢の街を歩いていて目に入ったのが ニューヨークカップケーキ のお店だったんです。オシャレないい店だなと思った瞬間、店舗の雰囲気を賃貸に生かせないかと思いつきました。

そこで女性のインテリアコーディネーターさんに、お店まで行ってもらって、この店を賃貸の部屋にしてよと伝えました。完成した部屋を内見に来た女の子は、バストイレ別が絶対条件だったんだけど、店舗みたいにオシャレな部屋を見たら、そんな条件なんでどこかに飛んで行ってしまうくらいすごく気に入って、即決してくれたんです。

でもこの部屋も決まるまでに4ヶ月かかってしまって。改めてリノベーションと仲介をセットにしていかないとダメだと痛感しました。



──リノベーションタイムの蒲谷社長とはどうやって知り合ったんですか?

全国賃貸住宅新聞という、マンション経営と賃貸経営の情報が載っている業界紙があるんですが、そこにサーファーが住むようなオシャレな部屋が出ていたんですよ。近所で素敵な部屋を作る人がいるなと思って見たら、ルームスという不動産屋の名前が載っていたので、リノベーションは別のところに発注しているんだろうなって思っていました。でもよくよく調べたら、ルームスの社長自身がリノベーションをやっていると知り、通常はリノベーションをしている業者と仲介をしている業者が別なので驚きました。

その頃、たまたま三宿に物件が空いていて、何社かにリノベーションの声をかけていて。その中の1社からは既にこの部屋に入居したい人がいると言われていました。普通の大家さんだったらそこで決めちゃうと思います。でもね、僕は勘が働いたんです。蒲谷社長と一度付き合った方がいいだろうって。それでほかの業者を断って蒲谷社長にお願いすることにしました。入居者が決まっているのに断るという大家は僕ぐらいだと思う(笑) 



▲対談中の蒲谷社長と池上さん。仲がよく、笑いが絶えません。


──他の業者を断ってまで頼むなんて、相当期待されていたんですね。

そうなんです(笑)それで蒲谷社長と知り合って、普通のワンルームと、もうひとつ広めの部屋をお願いしました。僕は無垢のフローリングがいいと思っていたから、それをお願いして。それで完成した部屋を見に行ったら、家具がたくさん置いてあるんですよ。しかもめちゃくちゃオシャレな家具で、部屋の雰囲気に合うんですよね。

今までお願いした業者の中で、家具までコーディネートして設置する人なんていなかったので、これはすごいなと思いました。だから撮影した写真もすごく良くて、すぐに決まりました。その頃からただリノベーションするだけでなく、オシャレな空間づくりをすることの大切さにも気づきました。

リノベーションと、仲介と、家具を置いてコーディネートすること。この3つが大事だなと思い、蒲谷社長には今もお願いしています。


BEFORE




AFTER



▲リノベーションタイムが担当した池上さんのマンションの一室、「三宿カリフォルニアナイズ」。詳細はこちら


──その3つのポイントに加えて、何か力を入れていることはありますか?

最近は共有部分に力を入れています。大家さんの勉強会で、共有部分もキレイにすると長期の入居に繋がりますよと教わって。それで蒲谷社長に頼んで、イラストレーターさんにチョークイラストを描いてもらったり、植物やわんちゃんのアートを設置したりしました。そのおかげで誰も見向きもしなかった掲示板を見てもらえるようになったんですよ。

特別お金をかけているわけじゃないけど、ちょっとした高級マンションのエントランスみたいになりました。他の物件は共有部分に傘が置いてあったりするんですけど、うちは一軒もないんですよ。共有部分をキレイにしたので、傘は置かないでくださいと入居者さんにお願いしたんです。その代わり、入居者さんに傘立てを差しあげたら、皆さん傘を外に出さなくなりました。ルールを守ってくれるので、ありがたいですよね。



──ここまでしてくれる大家さんっていないですよね!そういった心遣いが嬉しいと思います。私も池上さんのマンションに住みたい(笑)普通の部屋ではなく、オシャレな部屋にこだわる理由はなんでしょうか?

オシャレな部屋に住むことによって、生活の質を高めていってもらえたらいいなと思っています。例えばあらかじめスピーカーをお付けしているのは、仕事で疲れたときや辛いときに、ここでリラックスしてもらえるんじゃいかという僕なりのちょっとした気遣いだったりします。

昔の大家さんは、「ひとり暮らしの人はどうせ帰って寝るだけなんだから住むところは最低限でいい」っていう発想なんです。でも僕は逆だと思うんだよね。住む人に喜んでもらえる部屋作りを心掛けたいなと思っています。





▲池上さんのマンションのロビー。植物やアートを設置することで無機質な空間からあたたかみのあるものへ。


──今回、ローカルデータで入居者の募集をやろうと思われたのはなぜですか?

普通、賃貸物件をお持ちになっている大家さんは、大手募集サイトでとりあえず募集をかけて、お客さんを引っ張ってくるという形を取るんですが、僕はそれを辞めようと思っています。

こだわった部屋を探す人は大手募集サイトよりも、オシャレな物件の載っているサイト(グッドルームやRストア、リノベ百貨店など)で探してくるんですよね。そういうサイトで、一生懸命探してきて、やっとの思いでオシャレな部屋を見つけたらすごく嬉しいじゃないですか。そんなふうに出会って入居してもらえたら、その部屋をすごく大切にしてくれるんじゃないかなと僕は思うんです。希少価値を高めるという意味もありますが、こういう部分が大きいですね。



──大手募集サイトから離れてみようと思ったきっかけはなにかあったんですか?

大手募集サイトだと、部屋の写真と設備のことしか出されていないんですよね。部屋の写真だけで判断することが多々あって、本当の部屋の良さが伝わらない。そういうミスマッチを起こしたくないから、離れていきたいと思うようになりました。

もっと部屋のいい部分や欠点をしっかり載せたら、よりリアルに特徴が伝わってくると思うんです。なので、今回みたいに実際に行って写真を撮った人が物件の特徴を発信していく、というような募集の方法をやっていきたいんです。





空間プロデューサーを目指していきたい


──最後に将来を見据えた一言をお願いします!

大家さんって実は空間プロデューサーなんじゃないかと最近思い始めました。

入居者さんにとって住みやすい環境を提供することが僕の仕事だと思っているので、その中で空間をどう生かしていくかが勝負どころですね。今までは部屋の中だけの空間で完結していましたが、今後は共有部分も含めてトータルでオシャレな空間にプロデュースしていきたいです。

将来的に名刺の肩書に空間プロデューサーと書いてあったとき、「あ、大家さんやってるんですね」って言われるくらい、空間プロデューサーと大家さんが密接な関係になっていったらすごくいいなぁと思います。

高級なレストランに行くと、ワインのソムリエがいるじゃないですか。その感覚で、住まいのソムリエがこのマンションにいるから、実際に内覧をしてみようというような立ち位置を目指したいですね。



インタビューを終えて


不労所得で悠々自適な生活をしているという従来の大家さんのイメージを払拭して、入居者にとって心地いい部屋を提供する空間プロデューサーを目指したいという池上さん。終始穏やかにお話をされていましたが、「入居者を幸せにしたい」という信念の強さを感じました。こんな大家さんの元でなら、快適な賃貸生活が送れそうですね。




【大家さんインタビューvol.1】入居者を幸せにする空間プロデューサーを目指していきたい。池上正芳さんインタビュー【後編】
後編ではリノベーションタイムの蒲谷社長を交え、2人が行っている賃貸リノベーションについて対談をしていただきました。

ライター

ローカルデータ編集部

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