2017.08.13

【インタビュー】テーマは「映画の生態系をつくる」。株式会社Construct film works 三宅恭平さんインタビュー

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池尻大橋のレインボー倉庫内にある短編映画を上映するコーヒースタンド「JAM STAND COFFEE」。運営されているのは、もともと香川でミニシアターの運営をしていたという三宅恭平さん。上京し上映企画宣伝配給会社「株式会社Construct film works」を設立後、野外でのシネマフェスや飲食店で映画を上映するニューシネマダイニング、など、「映画の生態系をつくる」をテーマに様々な活動をされています。

今回は三宅さんに映画業界・配給会社のあれこれから、今行っている活動についてロングインタビュー!




ミニシアターを経営して気づいた映画業界の問題点


──三宅さんは最初は映像だったんですか?

映像作ろうと思っているわけじゃないんですけど、映画館にいたんですよ。香川県の。


──経営されていたんですか?

そもそも、ミニシアターで働きたくて大学の途中から働き始めて。アルバイトから入ったんですけど、閉館するんですよ。ただ、社長が全員解雇となっていろいろあってミニシアターの再建を一人でやり始めたんです。地下と4階に映画館があって、まず地下の小さいほうから再建をして。2年目に4階の140席くらいある大きいほうを再オープンさせて。2年間でなんとかできるようになって。
日本一面白い映画館にしようって思ってやってみて気づいたんですけど、話題にもなったし、いい感じにはなったんですけど、ここを何年かかけて日本一にしても、何も変わらないんだなってことに気づいちゃったんですよ。映画業界の流れ、仕組みの大きな流れの中で、特に何も変えられない。


──昔、シネコン(複合映画館)がすごい押し寄せてきた時ありましたよね。

今から7年前くらいのミニシアターがどんどん潰れてる時期ですね。で、ミニシアターもデジタル映写機を買わなきゃいけないっていう風になっていくんですよ。それがハリウッドや、シネコンの仕組みをそのままミニシアターもやらなきゃいけないっていう。
基本的に席数と人数を割り出すと、絶対に儲からないってことになっちゃうんですよ。配給側は映画をそこに渡すと儲からないから、出したくない。
ってなると、ミニシアターって基本的にもう映画を上映することができなくなっちゃう。
だから映写機をちゃんと買わなきゃいけないんだけど、初期費用がむちゃくちゃかかる。そんなにお金のないミニシアターは潰れるしかないみたいな状況で。

今の会社を立ち上げた理由は、映画の生産される仕組みを変えたいと思って最初は配給会社として作ったんですよ。


──へぇー!

長編映画を配給したんです。全国ミニシアター結構いろいろ上映させてもらったんですけど、これまたやり続けても、大きな仕組みは何も変わらないっていうことに気づいて。


──また気づいた(笑)

ここでもなかったのかと(笑)はぁー、と思って、これはもう既存の仕組みの中に入ると、僕が何を提案しても、そのシステムの中に組み込まれるだけなんで、こりゃもうダメなんだって。


──歯車になっちゃうだけだ、と。

なので、極端に言うと市場を分けようと。今ある映画っていう状態、市場というツールとは全く別のものを作るしかないと思って、今作り始めているところなんで。
ただ、既存のものが成立しまくっているから、別のとこに流通を作るっていうのはむちゃくちゃ大変なことで。


新しい市場を作るため、飲食店に着目


──その新しい市場を作るのって、具体的にどういうことなんですか?

単純に言うと映画の今の仕組みって制作があって配給があって映画館があって、お客さんがいるじゃないですか。もう一個違う流れを作って、一回キャッシュポイントをずらそうと。飲食店を仕組みに入れようっていうサービスをこれからやろうとしていて。で、飲食店をやってみようって。


──だからコーヒー屋さんを?

そうです。来年の春夏サービススタートを目指してるんですけど、要はイベントをしてもらおうということです。そこに映画を使って、飲食店の売り上げを伸ばす仕組みを作りたい。まずそれをうちが実際にやってみようっていうことで、まず3つ立ち上げたのとイベントプロデュース。

イベントプロデュースはイベントを行いたいっていう方がいたとして、その人が上映したい ものが決まっていれば、じゃあそれを上映しましょうと。飲食が欲しいって場合はうちも出店できるし、関連会社がごはん提供できます。じゃあ場所はこんなところがいいですか、チケットの販売方法もうちが側を全部作りますと。





▲レインボー倉庫池尻大橋内にあるコーヒースタンド「JAM STAND COFFEE」。外部、内部を問わず憩いの場になっています。


▲併設している「JAM STAND GALLERY」。写真展やワークショップなど、貸切で利用できます。



自分たちの経験した「ノウハウ」を提供するイベントプロデュース


──オファーする人は「やりたい」って言うだけ?

そうです。で、やれるっていうことです。
香川県のカフェでもオファーをいただいたので実際にニューシネマダイニングっていうのをやってもらいました。飲食店が映画を使ってお客さんとコミュニケーションをするっていうのをうちが実際にやってみて。

それと大きめのが、MUJINTO cinema CAMPで。これは誰でもフェスみたいなものを作れますよってことなんですけど、実際に2015年から僕ら2年間先に経験して、2017年に一般からスタッフを募集して、このノウハウを全提供するのでみんなで作ってみてっていう企画なんです。
実際にやってみたんです、もう手探りで(笑)。やったことを元に今年一般からチケットを販売して。スタッフ券っていうのを販売して、参加してくれた人にミーティングを全7回行って実際に運営してもらうっていう。



▲静岡県西伊豆にある無人島を舞台に、映画鑑賞を行いながらキャンプを楽しむというコンセプトの「MUJINTO cinema CAMP」。チケットは1日で完売したそう。


▲映画の上映は組み立て式の大スクリーンに。


やろうと踏み出せば、誰でもできる


──その時は三宅さんは離れてるんですか?

いや、いきなりやってと言ってもなかなか難しいのでオペレーション組みをして、会議も 弊社で台本を書いて。そこに乗ってるだけなんですけど、自分たちが作っているっていう感覚を味わってもらって。WEBアクセスがどれくらいあればいいかとか、どういうふうにメディアに出すかとか、全部データも公開して次からは自分たちでもできるようにしてもらう。


──ある程度、三宅さんが全部現地に行ってやらなくても手離れがいいように動ける人間を育ててるみたいな。

そうです。僕らは基本的に何もしないので。いつかはみんなできるようになる。みんなできるんです、絶対に。何ができないかと言うと、やろうという踏み出しができないだけで。やっちゃえばできるんです。


──乗せてあげちゃえばね。

そう。最初の2年間はやっぱり辛いんですよ、むちゃくちゃ。儲からないし(笑)それで辞めちゃうんです。だったらノウハウを作って提供しますから、皆使ってみてくださいって。自分たちで経済活動を生み出せるようになってもらおうと。
なんでかって言うと、自主制作とか短編映画を作ってる人たちって映画でお金稼げてないわけですよね。映画って、いきなり興行にかけようと思ったら1000万レベルとかでかかるんですよ。そんなの誰も作るわけないじゃないですか。なのに、面白い映画が生まれないとか言ってるんですよ。バカなのかなって(笑)


──あははは!(笑)

作れるシステムがないから、作らないよ誰も。短編映画とか自主制作の人たちがどうやったら順当にボトムアップで映画を公表していけるかっていうところにまず飲食店を巻き込んで、そのWEBサービスの中で公開してっていう仕組みにしようと思って。

将来的にはきちんと有名監督を生み出したり、有名俳優を生み出したりとかしようと思っていて。その中で上映会をしたいという人は、うちを介してもらえれば、その作品を使うことができる。作品をストックするっていうこともできるんです。今ある既存のモノを全く介さなくてもいい仕組みを作りたいですね。それがいつかできたら、今あるものがもういらないんですよね。



▲取材中メッセンジャーの方が「JAM STAND COFFEE」に。いつもフードを届けてくれるんだそうです。

──飲食に目をつけたのは、なんでですか?

結局映画館の一番辛いところってスペースなんですよね。それのランニングが一番辛いんですよ。っていうことは、スペースのある場所さえあれば、0で済むじゃないですか。飲食店って、業態としてめちゃめちゃ多い。上映環境としても悪くない。
財布の話なんですけど、人は映画に1000円を払っているのか、何にお金を払っているのかを考えた時に、飲食店だと飲食費にお金を払わせられてる。
自主制作って、エンターテインメントとしてまだ面白くないこともあるんですよ。この映画に1000円払ってくださいとなると、面白くないから絶対に広まらない。入場料を取らない前提なんですけど、ご飯に1500円払って、そこに映画があったというだけの環境を作りたい。


──ついでに、みたいなね。飲食店って入った段階で絶対にお金が落ちますもんね。

逆もまたあって。飲食店も困っている人がたくさんいるので。方法がそろそろ飽和してきて、そこに何万も払ってるんだったら、うちで加盟店登録してもらったら数千円でWEBサービスの中に載るし、イベント収益があるだろうし、そこにお金をかけてもらった方がいいんじゃないかなって。

ユーザーが東京でニューシネマダイニングやってくれる場所どこかなって検索するとバーッと出てくる。そのサービスの中でそれぞれが経済活動をまわしていって。で、その中で生み出したものを映画館に返していって、且つ海外に出ていって。
もう一軸あってもいいんじゃないかと。なんで一個の流通の仕組みでやらなきゃいけないのか、別でもいいじゃん。いろんな可能性はたくさんあって。





──ちょっとずつ試しながら仕組みを作っていって。

そう。実際にやってみないと問題も見えてこないから。やってみたいんですよ、いろいろと。


──最終地点までを考えると、今の進捗はどのくらいですか?

一応、そのサービスを浸透させるのは3年で完成させたいなと。海外も含めて。割と一巡するのが、ヒーローが生まれたり人気作品を生み出せたりっていうのが2年くらい。普通に人がそれを使ったりしてるっていう本当になる状況は、3年あったらいけるかなと。


上京して、一番最初の拠点にした下北沢


──香川から東京へというのは、やっぱりアートに一番敏感な場所だと思ったからですか?

そうですね。あとは単純に人が多い。動きやすいしスピードが早いので、紹介してもらうとすぐ会えるし、その時間ですよね。東京にまず行こうと思って家のものをとりあえず全部捨てたんです(笑)グレゴリーのリュックだけ持って。


──それまで東京に馴染みはあったんですか?

いや、全く来たことなかったです。誰も友達いないので。


──本当に!?一番最初の拠点ってどこだったんですか?

下北です。


──なぜ下北にしたんですか?

とりあえず、まず渋谷にタクシーで行ける範囲じゃないと、活動したくなかったんです。それ以外は東京だとは思ってなかった。深夜とかに呼び出されてもすぐに行ける距離にはいようと思っていろいろ考えて。
僕、音楽をやっててその時に下北結構来てたんですよ。ちょっと馴染みがあって。


──ボーカルでしょ?絶対(笑)声がいいから。

そうです、バンドで。とりあえず下北で、そこからどうしようと思って。来たときは家も決めてなかったので、仕事もないし。交差点に立ったら僕だけ理由がないんですよ(笑)


──わかるその感覚(笑)

僕だけどっちに行ってもいい。すごいな、これと思って(笑)それから家を探して、まず飲食店でバイトをしようと。


──下北ですか?

目黒のお店です。映画館を2年間やって、割とうまく行ったので、ちょっと偉い気持ちになっていて。結構自分できるんじゃないかっていうのを1回辞めようと。


──うん、傲慢をね(笑)

例えば偉そうに何か言われた時にふざけんなって思うのか、偉そうに言われないように自分で努力して、何を思うのかちょっと考えてみて。一回フラットに戻って、そこからきちんと会社を作ってやっていこうと思って。東京に来て4ヶ月くらいで個人事業で始めようと思って準備をして。で、ちょっといろいろな縁があってこの場所(レインボー倉庫池尻大橋)でやろうと。





さまざまな業種の人とカルチャーを作っていく


──ここに来てどのくらい?

10月で2年です。やっぱり物理的に場所も欲しかったし、市場を移すために1回、映像の関係者じゃない人と仕事をしようと思って。


──それ大事ですよね、これからの時代っていろんな要素を組み込むことが。

じゃないと、また一緒じゃないですか。システムの中にいる人たちに僕が訴えかけても。業種は違っても概念が一緒の人の方が早い。


──そう!わかる!そこが一番大事だと思う。

ここにいる人たちも、同じようなことを服で考えてたりしてる人もいれば、施工会社の人もいる。その人たちと何かを生み出した方が、映像だけで勝負するよりも全然早い。いろんな要素があって、カルチャーを作っていくっていう感じですかね。


最後の最後は面白い映画が観たい


──三宅さんは映像がとかじゃなくて、もっと大きいところにいますよね。仕組み、流れ作りというか。

結局人が好きで。割と信頼していて。なんでもできると思うんですよ、みんな。僕がこの立場から言うのもですけど、やれるのにほんのちょっと最初のきっかけでやれない人が多かったりとか。
僕は市場全体を活性化して、最後の最後は面白い映画が観たいです、やっぱり。
10年後20年後に生まれた人たちがこの現状のままいくと、面白い映画作りたいって思うかというとyoutube頼りになっちゃうと思うんですよ。
だから、自分が死ぬまで面白い映画を観るために、生産を作っていくっていう。僕は映画を観たことによってで人生が変わったから。



──何の映画で一番変わりました?

もういっぱいあるんですけど、僕は「ジョゼと虎と魚たち」で割と人生が変わった。あれを観た瞬間に世界が変わりましたよね。ウワーッて。


──残りますよねぇ、あの作品。

映画自体もすごいなと思ったんですけど、あれを作るってすごいことだなと思って。どうやったらあの空気を作れるんだろうって思ったし。
一番最初は映画館で観たっていうことがすごい衝撃で、映画館やりたいな、ミニシアターやりたいなって思ったんですけど。システムをちゃんとやらないとああいう映画はもう生まれないだろうと思うし。それを作って、いつか面白い映画を生み出せたらいいなと思うんですけど。


──ご自身は撮るほうには行かなかったんですか?

今作ってる映像とかは撮りますけど、基本的に発信はしないですね。昔、音楽やってたっていうのもそうなんですけど、僕にはやっぱり才能がなかったというか、そこじゃなかったし。その時にいろんなことを学んだんですよ。すごい利己的だったし、自己中だったし。失敗したことがたくさんあるので。
僕はもう圧倒的にアーティストじゃないっていうことを決めたんですよ。だから、基本的には作らない。自己表現を映像にっていう気持ちは一切ないです。


──プロデュース側ですね。

よく言えば。そういう方がいいなって。


──仕事に対してもそうだけど、自分に対しても常に俯瞰できてる。できそうでできないから、人って。やっぱり我が出ちゃうから。

今まで完全なる主観で生きてきましたから(笑)


──でもそれに気づけた。未だに気づけてない人たくさんいるし。

何回かそういうグルンってなった時がやっぱりあって。その時はすごい落ち込みましたね(笑)こんなことを自分はしてしまっていたのか。何も考えてないし、自分の感情を何か表現したら全員に伝わると思っていたし、伝わらない奴がクソだと思ってました(笑)





──お前らにはわかんねーんだろ?みたいな(笑)

何でわかんないの?みたいな。それに対して、伝えるっていうことも考えたし、どうやったら伝わるのかな、伝えられるような仕組みは何だろうって。全く考えが浮かばなかったから、すごい考えるんです。



──そのグルンって変わるきっかけって、例えばその一つの作品だったり、人だったりですか?

ずっと昔から仲の良い友達がいてバンドやってるんですけど、今はメジャーデビューして、めちゃめちゃ有名になってきていて。高校の同級生なんですけど、彼が半端じゃなく人に伝えるというか、人を惹きつけるのが上手くて。彼が有名になっていく過程をずっと見てきて、一気には売れないんだなと。じゃあ、だいたいどれくらいでやらなきゃいけないかっていうのをちゃんと考えるようになったし、逆に言うとそれをやるためには何をしなきゃいけないのか、すごい指標になって。


──三宅さん焦ってないでしょ?

全然。見えてますから、こんだけかかるっていうのが。飛ばせないんですよね、絶対に踏まなきゃいけないことがあって。地道にしっかりやって、ないことにはできないんです。
何もないところから、いきなり何かは生まれない。当たり前なんですけど、HPアクセスが0だとチケットって売れないじゃないですか。ってことは理由がやっぱりありますよね。何かがあるために、何かが必要。それをやるためには何が必要なのか。


ノウハウを公開することは、受け手の時間短縮に繋がる


──コンサルやればいいじゃないですか(笑)

いわゆるノウハウというか。僕が経験してきたことを全部公開しようと思うし、結局僕らがやってることって時間短縮なんですよ。僕が3年かかったことを次の人に伝えれば、その人は1年でできる。その次の人が半年でできる。ってなったら、どんどん時間短縮できて、それを使ってもっといいことを考える時間が生まれる。多くの蓄積の中のちょっとを担ってる。うちはそれで何かしら提供できればいいかなと。


──三宅さんの今に至るまでの背景も、出来事も、変わるきっかけも、全て繋がっているから安定感があるんだな。考えやヴィジョンを聞いてても、話し方も含めて。

そんなに大きく何も変わらないっていうことはわかっているし、だけど変えなきゃいけないし。焦らず、早くしろ。まぁそれでダメだったらダメでいいかなと(笑)ははは!

僕は別に権力とか地位を確立するためにやろうとしてるわけではなくて。そのサービスが皆に求められてないものだとしたら、それは僕らの責任だし、また求められていることを一から考えればいいし。
別にスッゲーお金持ちになりたいわけじゃないし。お金があればできることが増えるので、お金が欲しいなと思うことはありますけど。王様みたいな暮らしをしたいわけじゃないので(笑)
やろうとしているのは、すごいものを届けたいんじゃない。まぁまぁ楽しいことを皆ができるようになるっていうのと、皆にとって何かしらのいいものができたら、それが一番の目標であって、やりたいことですね。

インタビュー・構成:ミズカ、写真:もんとみ(一部提供)




ライター

ローカルデータ編集部

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