2017.09.06

【インタビュー】夜中から明け方だけ開店!お酒とおばんざいの店「晴−haru-」森下貴之さんインタビュー

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下北沢の「晴−haru-」は、京都出身の店主森下貴之(よしゆき)さんが経営するお酒とおばんざいのお店。お店は入れ替え制で、晴−haru-の営業時間は深夜0時〜朝7時。お店を閉めたあと、家に帰る前にちょっと飲める場所があったらなぁという森下さんの気持ちから始まりました。


▲晴−haru-が開いているときは暖簾がかかっています。※取材の為オープン状態にしていますが、普段は昼間に営業はしていません。




▲インタビューに応じてくださった、オーナーの森下さん。


家に帰る前に寄れる場所が欲しかった


──お店はオープンしてどのくらいですか?当初からこの入れ替わりの形態で?

お店は3年半ですね。先輩がもともと同じような形でこのバーの2部をやっていて。先輩が辞めるタイミングと、僕が前にいたお店を辞めるタイミングが重なって。で、後継ぐかって話になって。


──その前にいたお店はどんな感じだったんですか?

ライブバーです。もともとね、京都から上京してきてバンドをやっていて。


──ちなみに何を?

その時は歌ってました。音楽をやりながらサラリーマンをやっていたんですけど、メンバーの親父さんからお店を出そうと思ってるっていう話があって、脱サラして店長として入って、6年やって。
そのお店が朝5時くらいまでのお店だったんですよね。で、終わってから行くところっていうのがなかなかなくって。


──終わっても行きたかった?(笑)家じゃなくて。

家に帰る前のワンクッション欲しいじゃないですか。チェーン店とかもあるんですけど、そういうところじゃなくてカウンターでちょっと飲みながら、ちょっとつまみながら。時間的にもあんまり味濃いのとかじゃなくって、優しいものが食べたいなって。


──朝ごはん的な。

そうそう。そういう店ってないなと思っていて、それを5時、6時、7時とかにあったらいいなぁっていう店を、ただやったという(笑)




──じゃあ、もう2部っていうのは理想だったんですね。

本当は自分がやってる形を誰かがやっていて、そこに飲みに来れた方がよかったんですけど、やっちゃったんで。もう行くところないです。ははは!(笑)


──2部構成をやっている気持ちってどうなんだろうと思っていて。

下北ってぶっちゃけ家賃がすごく高いんですね。単純にいろんな経費が全部折半なんですよ。不利な時間帯だなと思ったんですけど、ターゲットは同業者なので。溢れるほどいるじゃないですか。案外気に入ってるから、僕はこの感じを辞めるつもりは全くないです。夜中だけっていうのは面白味があると思うんで。


──完全に折半なんですか?電気代とか。

電気代も家賃も一応折半。公共料金も折半。あと生ビールとかソーダとか、どっちがどんだけ使ったかわからないやつは恨みっこなし折半みたいな感じで。
でもこれくらい折半して、やっとやりがいのある数字が出てくるなぁと思うので、みんなホンマよううまいことやってんねやろなぁ、商売上手なんやろなぁって思いますけどね。


──前のライブハウスでお料理っていうのは?

やってました。ライブハウスって立ちっぱじゃないですか、飯ないでしょ。それを全部変えてやろうと思って、めちゃくちゃ居心地の良い椅子を置いたり。
酒は飲んではいたけど作れんかったから、ちゃんと日本バーテンダースクールみたいなところに行って基礎を学んで。和食もあったし、ピザも生地から作って焼いてたし。終わってからミュージシャンがちゃんと飯食えるとか。


──なるほど。

お客さんはいろんなライブハウスで同じミュージシャンを観るときに、「どうせ観るんだったら、あの店で食べて飲みながら観たいよね」って思えるような店が前の店。


居間のように使ってもらいたい


──ここは朝ごはんだけを食べに来るっていうのでもいいんですか?

来てくれてもいいけど、一応営業時間も書かずにメニューも出さずに、みなさん想像力働かせてくださいみたいな。ここはお酒とおばんざい。飯屋だけじゃなく飲み屋ですよっていう。そしたら、お高いお店なのかなって思って若い子が入りづらい。同業者の仕事が終わってから来る人ってあんまりガチャガチャしたくない。
ショットでキャーキャーやるときもあると思いますけど、そういうのはそういう店に任せようと思ったんで。ここは安心してみんなが普通に飲めるところに。


──家の一歩手前ですよね。

そうそうそう。居間みたいに扱っている人が多いですね。帰って飯食って、寝るまでの間いるところみたいな、そんな感じで使ってもらうのが理想かなと思ったので。
若い子にはちょっとビビりながら入ってきて欲しいくらいの。入ったら割と雑〜な感じにやってるので。





──森下さんは前のお店も下北沢でしたが、下北暦ってどのくらいですか?

だいたい10年ですね。ざっくり。


──お住まいはお近くですか?

この周辺。下北に住んだことは一回もないです。自分の中でON・OFFつけたいから、仕事場に住むのがいやなんですよ。


──なんとなくなんですけど、森下さん自身も生み出していくことが好きなのかなって。お料理もですけど、クリエイティブな部分があるというか。

昔っからいらん仕事を作るってよく(笑)飽きっぽいっちゃ飽きっぽいですよ。5年周期でいろんなことが変わって。25で出てきて、30でサラリーマンやめて、36で晴−haru-オープン、で今40みたいな。もう一軒作ったんですよ。


──え!?

イタリアンなんです。向こうはソムリエであってシェフである人がやってくれてるんですけど、「よろしく!」って言って、もう完全に任せてるんですよ。もともと池ノ上で10何年やってはった名店のシェフなんですね。終わってからここで飲んではって。

店名に人の名前つけてるんですけど、丸に漢字一文字で統一しようと。「登-nuovo-(ノーボ)」は「nouveau(ヌーヴォー)」ですね、フランス語で言うと。新しいっていう意味だから、新店舗だしちょっと階段登るしちょうどいい。店主も自分の名前がついていたら、自分の店って思うし。


──ここの店名の由来は?

「晴」はせがれの名前なんですよ。やるときにね、まだ0歳やったんですよ。0歳でお父さん一瞬無職になって。これは息子の名前でもつけて背負わんと真面目にやらんなって。



3店舗目は音楽性を大切にしたライブバーを


──看板の重さが違いますね。じゃあこれが増える可能性も。

3個目にまたライブバーができたらいいなって。辞めたのがオーナーと話をするときに、俺は完全にオフェンス、向こうはディフェンスみたいな形になってしまって。もう真逆になったんで。僕もちょうど子供が生まれたばっかりで、ディフェンシブな感じのところでちっちゃく生きていく画が浮かばんぞと。


──これを守るために攻めなきゃってことですよね。

っていうのがあったので、クビにしてくださいと(笑)


──最終的な目標はライブハウス?

前の店は1店舗だけでやってたんですけど、そうすると全然かっこよくないのに、お客さん入るからこのライブいいですよっていうこともしなきゃいけなかった。すごい光る原石をお客さん0人の状態でも育てるっていうことも、なんなら醍醐味って思ってて。そこはバランスを取りながらなんですけど、音楽は本当に儲かるもんじゃないなと思うので。

これはだから、商売っていうふうに考えてちゃうと自分の音楽性がおかしくなっちゃう。音楽を嫌いになっちゃうっていうのもあったし、じゃあどうしたらいいのかなって思ったら、他でちゃんと基盤を作ってそれを軸にして、言い方が悪いですけどオーナーが趣味でやってまっせっていう感じに。そう言われてもいいと。


──変なところでぶれない。

そうそう。本当にあそこって、かっこいいミュージシャン多いよねって。人入ってる関係なしに。それはお店の努力で、美味いものを出して、居心地のいい空間を作ってっていうのをね、やって。

綺麗事になっちゃうんですけど、売れてる人でも俺が好きな人だったら全然いいし。そういう人が使いたくなるような店作りたいし。これが最終というか、まぁ40半ばくらいにちょっとリアルに考えられるようになれたらいいなと思っていて。





──下北全体で感じてるのは、30代、40代くらいの年代が次の下北っていうのを作っていきたい、盛り上げたいっていう人も多いですし。作っていかなきゃっていう。

若者の酒離れみたいなのあるじゃないですか。思ってるのは、酒がダサいものになってんねやろなって。お酒でね、クダ巻いて酔いつぶれて、「うわーもう見てられへんわ、あんな大人。あんな風にはなりたくないな。」っていう人たちに俺は、すごい怒ってるんですけど。この店でもね、僕が「おい、こら」と怒るときはだいたい先輩です。
若いのはしょうがない。自分のことを考えても、若い頃はいろいろやらかしてるし、恥ずかしいなっていうことたくさんあったし。けど、先輩はそれをやらんといてくれと。若い子はそれを見てるんでっせっていうのがあるから。
辛いのやしんどいのはわかる、酔っ払うと加速するのはわかるんですけどね。


──辛くても、そこまでお酒に頼るなと。

その一個前の一番いいところでね。俺も3年半で偉そうなことは言えないですけど、トータルで下北に10年いるから変に長い感は自分の中でできちゃってるし、みんなにもそういう目で見られてる感もちょこっとあるんですけど。いつまでも先輩に頼ってられへんのもあるし。
今30前半くらいで、そろそろ独立などを考えている奴もいるから、見られてんのやろなって思うし。かっこ悪い大人はあかんよ、と。


──なんか教育の場になってる(笑)

そこまでは言わないです。京都人なのでね、察してくれをすぐ出すんですけど。悪い癖ですよね。やらしいやり方ってみんなに言われますけど(笑)言葉のチョイスをやんわりクーッとやるんで。
同業だらけやと、みんなもいろんなお客さんに慣れてるから。


西の食材を使った家庭の味


──お店のアピール所ってあります?

ここ勝手に京料理の店っていう人がいるんですけど、おばんざいって家のおかずのことで、お惣菜やから。それを京都弁で言ったらおばんざいになるだけで。オカンが作ってたような飯。母ちゃんとか、ばあちゃんが作ってたのを思い出して、そういえばこんな味つけやったなみたいな。家のご飯みたいな感じってところかな。

おばんざい屋さんって、大皿がドンドンドンと並んでて、つまむみたいな形だと思うんですけど、俺がやってるのは本当に家なんですよ。なんでもいいんですよ。唐辛子が炊いたんがあって、茄子の煮浸しがあって、つけもんがあって、もずくがあって。そんでメインで魚が焼いてあって、味噌汁がある。ここは常に冷蔵庫に入ってるもんなんですよ。だから、ここって定食とかあるんですか?って聞かれるんですけど、俺はそんなん用意してなくて。ご飯セットがあるから、適当に合わせれば?ってなって(笑)

食材は京都の八百屋から送ってもらったり。京都だけじゃなくて、なるべく西のもんを。関西近郊の、僕らが普通に食べてたようなものをなるべく仕入れて、食べて欲しいなっていうのがある。


▲関西から送ってもらっているという食材。


──今の状況を活字でやって、想像してくれるかな…(笑)

はははは!(笑)入り口のね、店構えもそうやし、僕はすっごい生意気だと思うんですよ。やってることはなんてことない、ただの居酒屋ですから。


──生意気っていうか、強気ですよね。

なんでも小器用にやるなって自分でも思うんです。昔っから、成績もオール4なんですよね。飛び抜けてなんかっていうのはないんやけど、バランスがいい。そういうタイプの人間なので、料理人とは思ってないんですけど、今は飲み屋の親父やってるのが意外にバランスがよかった。
僕は人を繋ぐのが多分好きなのかなっていう。みんなが居心地良く、気分良く飲めたらそれでいいと思う。そんな感じのお店です。


──わかりました。ありがとうございました!

関西弁のイントネーションってずるいじゃないですか。角がない感じで聞こえるから。活字だとすんごい偉そうになってません?大丈夫?「なになにだよねぇ〜」っていう感じになってたらすっげぇ怖い(笑)





おばんざいの食レポ



京都の家庭料理が活字でイメージが伝わるか不安がっていると、わざわざ出してくださいました!!


▼長ひじきとおあげさんの炊いたん(左)、伏見の甘辛唐辛子(右)

出汁が染みていて、ご飯が欲しくなる長ひじき。大人になるにつれて求めてしまう味です。甘辛唐辛子はあっさり、さっぱり。唐辛子の味がガツーンとくると思ったら、しっとり馴染む味でした。


▼特製煮卵


いろんな風味が後から追いかけてくる煮卵。森下さんは誕生日に年の数を作らされたりしたらしい。いただいたのは今日作ったもので、2日目が一番美味しいとのこと。4日目になるとチーズみたいになるらしいです。今日何日目?と聞く人もいるほど、この味にハマっている人がいるんだとか。


──このお料理は、京都ではポピュラーなものなんですか?

っていうわけじゃないけど(笑)ずるいのは、もう京都人じゃないですか。
俺が作ったらなんでもおばんざいってことでいいやろって、どっかで思ってる節があるんですよ。色が鮮やかなものが一個もない、黒と死んだような緑ですけど(笑)こういうのが家の冷蔵庫に入ってるんです。これが一番京都っぽいかも。

インタビュー・構成:ミズカ、写真:もんとみ



  • 晴−haru-

  • 住所東京都世田谷区北沢2-9-23
  • 最寄り駅京王電鉄・小田急電鉄「下北沢」駅 南口から徒歩3分
  • TEL03-3467-7620
  • 営業時間0:00~7:00
  • 定休日不定休
  • URLhttps://www.facebook.com/obanzaiharu/



ライター

ローカルデータ編集部

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