2017.09.13

【インタビュー】シンプルさには全て裏付けがある。スタイリッシュ地域密着コーヒーサロンBeastie Coffee Club Tokyo弓削伸弘さんインタビュー

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三軒茶屋の「Beastie Coffee Club Tokyo(ビースティーコーヒークラブ トーキョー)」は、弓削伸弘(ゆげのぶひろ)さんと坂田健(さかたけん)さんが共同経営されているコーヒーショップ。単純にコーヒーを飲むだけ・売るだけの場所としてではなく、お客様との交流や地域と人を繋ぐ架け橋であったり、サロンのような場所になれたらという想いのもと、経営されています。

今回は弓削さんに、坂田さんと一緒にお店を始めようと思ったわけや、経営する上で必要な価値観などについて、普段聞けないような深いお話をしていただきました。



▲レンガとダークグリーンのフレームが目印の「Beastie Coffee Club Tokyo」。シンプルでスタイリッシュな店内はコーヒーの香りと心地よい音楽で満たされています。


▲インタビューを受けてくださった、オーナーでありコーヒーの管理を担当されている弓削さん。

──まずブログを全部読んできたんですけど(笑)もう素晴らしすぎちゃって、内容が。

ええっ!そんなに?(笑)


──全部網羅できるというか。細かいところまで説明されているというか。聞きたかったことがほぼ詰まっていたんですけど、お2人が出会ったのは前職ですよね。そこで、自分たちは結局自由にいった方がいいという、意見が合致したときに「じゃあコーヒーやろうか」ってなったんですか?

いや、それはもともと僕がコーヒーをやっていて。コーヒー屋をやろうかって、ちょっと頭の中にあったんですよね。


──あ、お一人で?

はい。前のカフェは雇われ店長という形で、自分で出すのは初めてで。もともと僕はITの人間なので、IT企業を起こして10年間くらい働いていたんですけど、もう1回コーヒー屋やってみようかなっていう想いが10年の間にあったんです。

前のカフェもそうですけど、運営はもう本当に僕中心でやったんですね。要するに、他の人の意見はほぼ見えないというか、僕のイメージするものを単純に形作るっていうことをしていたんですけど、まぁものすごく大変だったんですね。当然ですけど僕の範囲を超えていかないっていうような。皆でやっていこうとは言っていても、僕の判断で全てが決まるので、人と組んで何かやってみるっていうことができないかなってちょっと思っていて。

まぁぶっちゃけて言うと、今までのやり方に飽きたっていう。人生の中で考えた時に、やり残しているのはその人に賭けてみて、支えるじゃないですけど。そういうのにチャレンジしたことがなかったので、いい人がいればっていうのはどこかで思っていたんです。

そうしたら、世田谷ものづくり学校っていうところのカフェで坂田が働いていて。接客の様子をずっと見て、僕はお客さんとして体験していて。すごいなって思っていて、彼がちょうどタイミングよく職を変えるっていうので、コーヒー屋をやろうと思っているんだけども、一緒にやってみないかっていうお声かけをしたという感じです。



▲ショップブランディングを担当されている坂田健さん(左)と。

見えないところで一手間かける、坂田さんの接客


──パートナーの坂田さんの接客で、一番惹かれたところってどういうところだったんですか?

多分、実際にお店にいらして感じたかもしれないんですけど、基本的にはぶっきらぼうなんですよ。でもなんか、それとは裏腹の。

その前のカフェで、僕は名前を言ってなかったんですけど、僕の友達が坂田がいるカフェに寄って、よく話をしていて。そのルートから僕の名前を聞き出して、名前で呼んでくれたりとか。「弓削さん、ランチできました。どうぞ。」っていう、ちょっと一苦労、見えないところで一手間かけてる接客をやっているような人だったんです。
表面的な印象っていうのでほとんどの人は判断しやすいんですけども、そうじゃない。お客様は大事ですからっていうことをしっかり根に持った上で、長い目で接しているところが惹かれたところですね。


──それは弓削さんもずっとポリシーとしていたんですか?

いや、それは逆に僕にないところでしたね。


──へぇ〜。

一緒にやるっていう前提に、僕と反対の性格の人っていうのをずっと思ってたんです。
だから僕と同じような考え方をする人だと、前と同じような形にしかならないだろうと思っていたので、あえてぶつかるというか。そういう感じも坂田に対して思っていたことですね。





僕のイメージはなるべく入れない


──実際ぶつかることってあるんですか?

よくありますね。そこはもう僕はこの店は坂田に任せているので。そういうポリシーで、よっぽど僕が「ちょっとそれはおかしいでしょ」っていうこと以外は何も言わない。何かぶつかりそうなタイミングがあったときには、彼の意見を尊重する。もうちょっと盛り上がるように環境を作っていく、という感じを注意してやってますね。


──それは今までとは違ったやり方、スタイルですか?

全く違いますね。僕のイメージとは全然違うところに流れていくので、変な言い方をすると未来が見えない。


──それはワクワクですか?それとも不安?

どっちもあります。ポジティブに考えると、何が起きるかわからないっていう未来が作れるっていうところで。だからこそ、こういう感じのお店になったんだと思います。正直に言うと、もともとイメージしてなかったですね。

僕は喫茶店が好きだったので、喫茶店の文化を今の形に合わせてやりたいっていうのがあったんですけど、この形を作ったのは彼で、こういう格好しましょうっていうのも彼。それに対して、イヤとは一言も言いません。「弓削さん帽子をかぶってください」、「はい、わかりました」本当にそれだけです。そこには僕のイメージはなるべく入れないっていうのがありますね。


──むしろ出てきたりしません?

出ては来ますけど、それは単純にものさしでしか使わない感じで。出てきたものがどういうものなのかっていうのを、全体的にはかる。例えばサードウェーブに寄せた何かをやろうかっていうのがどこかに出てきて、客観的にこの店を見たときに、それは必要ないっていうような、ものさしとして。


──今後のヴィジョンというのは、坂田さんが持っている?

いや彼もやっぱりそういう意味でいうとわからないんじゃないですかね。当然初めてやってることですし。





地域に根ざしたスペースに


──地域に根付くっていうか、関わりをすごく大事にされて進んでいかれるのかなっていう感じがするんですけれど。

そうですね。ここでいくらコーヒーの良さを伝えるんだとか、スペシャルティコーヒーがどうのこうのと言ったところで、そういうのに興味を持って来る人って本当に最初の時期しかいなかったですし。地域に根ざして常連客を増やしていきたいっていう。


──今は割と近隣?

近隣の方だけですね、ほとんど。だいたいこの辺で前を通って、あの看板のない店はなんだろうと。ちょっと気になってお店の前まで来たら、なんかいかつい感じのおじさんが2人立ってるから、入りたくないなって言って(笑)ハードルを超えてきたお客様がいらっしゃる感じですかね。


──この場所を選ぶ前はいくつかの候補はあったんですか?

ありました。もともと僕はお店を構えるっていうよりは、コーヒー豆屋さんをやる方がイメージとして大きかったんです。工場やガレージに近い感じで探していたので。まぁ、やっぱり安いところとか、駅から離れててもいいしとか。そういうところで幾つか見てたんですけど、なんかこう彼(坂田さん)がイメージ湧かないみたいな仕草をすることが多かったので、やっぱり店としてやらないとダメだなと。そこは2人でやるっていうのが突破点かもしれないですね。

ここはそういう意識で見た最初の場所だったんですけど、僕の中では通行量のある程度あるところの道沿いにある物件っていうのが、それだけは絶対ずらしちゃダメだっていうポイントで、そこはもう完全にマッチングしてたので。この物件は彼が「ここどうでしょう」って持ってきた物件なんです。じゃあここでいいんじゃないですかって。





彼になら裏切られてもいいという基準


──お2人のお付き合い自体はもう長いんですか?

3年弱くらいですかね。


──それで任せてしまう。共同経営っていう形ですよね?

そういう形にしました。やっぱり自分の頑張りが自分に還元されるような形になってないとダメだって思って。なんでそんな付き合いが浅い人とやったのかっていうところですけど、逆に付き合いが深いとできないんですよ、ビジネスが。無理なんです。


──情が出ますもんね。

情が出ます。今の状態でも情が邪魔をするときがあるんですけど、やっぱりどこかしら他人っていうところがないと、本当にシビアな状況になったときに鬼になれない。そういうのもあって、逆にいいかなって。


──それはそうですよね。

もちろん自分のブランドを作るとか、大きくして売上を伸ばしていくことを考えるんですけど、一番重要なものが最終的には人が何かのタイミングで自我に目覚める、こういう生き方があるっていうのに気づいて、夢中になっていって、自分が生きていくっていうのと、仕事が一緒になっていくっていう様子を見るのがすごく好きなので経営者になりたかった。

自分の信頼は預けてもいいかなって思ってますけど、どっちかにしかならないじゃないですか。裏切るか、裏切られないか。世の中どっちかしかないです。必ず裏切られないっていうこともないですし。だから基準として、彼に裏切られてもいいかっていうだけ。


──なるほど。

それは本当にカフェに行ったときに、してくれたさりげないことで。


──そこに惚れ込んだっていう。

そうですね。それを大事にできる場所が作れれば、この人はしっかり自分を持って、やっていけるんだろうなっていうのを何度か見ているので、一緒にやりませんかっていう。


──そういうお話って直接されたりするんですか?

しないですよ(笑)

──じゃあ坂田さんはこの記事で初めて知る、みたいな(笑)

まぁ、してもいいですけどね(笑)あまりそういうの気にしないんじゃないかな?彼は彼で、「自分の意思で独立したんだ」って、誘われたとかじゃなくて。そういう意識を持っていたいっていう感じだとも思うし。



▲お店でご購入いただければ、コーヒーの淹れ方などの楽しみ方を教えてくれるそうですよ!


次の世代のサポートを


──さっきの仕事と人生が一緒になるっていうのは、弓削さんにとってはコーヒーのことですか?

いや、夢中になれること。なんでもいいです。若い頃って夢を語るじゃないですか。もともと僕は音楽をやっていたので、ドラムを。音楽でご飯を食べようとしていたんです。それにほとんどを費やしていたんですけど、周りの友達に「まだそんなことやってるの?」って言われながらやっていたんです。音楽がダメだったら何するの?って言われて、まぁ喫茶店だったらやりたいなみたいなことはノリで言ってましたけど。

30、40歳になったときに熱く友達に語っていたことって、何か実現したんですかっていうとできていない。音楽に関してはどうしても人の力っていうのが関わってくるけれど、コーヒー屋だったら、自分が何とかやればできるんじゃないかなって。
棺桶に入る前に、そういうシコリを残して死にたくないっていうだけで出しただけなんで(笑)ある意味意地ですね。もちろんそこに込めたい気持ちっていうのはあったので、それを形にして、じゃあ次どうなんだってことを考える。

ある時はITの技術者だったり、ミュージシャンだったり、コーヒー屋だったり、カフェの店長だったり。そういういろんな人生を40年間歩いてきて、小さいかも知れないけれども得たものを下の世代に伝えて、その人たちが自分の人生を成就するために何か役に立ててくれればいいなぁ、みたいな希望を持っていて。そういうのを何か形にしていくようなことをやりたいなと思っています。サポートっていう感じですかね。


──このお店とは全く別の活動でってことですよね?

そうですね。ちゃんと話せてました?(笑)コーヒー屋として構えてますけど、ちょっと異色な店であるだろうなと思っています。


──すごく信念を感じました。スタイルにしても、在りかたにしても、かっこいいなと思って。なかなか貫く人って、いないじゃないですか。最初は掲げていても、すぐにそれを下げる。

まぁ歳を取ったせいだとは思いますけどね。これしかできないよっていうものが、目に見えて迫ってきたときに、じゃあ僕らってぶっちゃけ何ができるのかなっていうところに行くんだと思うんですね。若い人たちはいろいろな可能性がまだ見えるでしょうから。ここはジジ臭い店って言ったら一番わかりやすいかな(笑)頑固で。





──お店のビジュアル的にも惹かれるものが多い。インテリア色が強いし。すごいその匂いがして素敵だなぁって。皆、付け加えたがるじゃないですか。引いている感じがかえってカッコイイ。

それも結果なんですけどね。まぁでも貧乏くさくならなくて良かったと思います。ほとんどお金かかってないんですけど。だからそれは本当に感謝ですよね。


──それこそブログを読んでいて、宣伝宣伝というか…そこは必要ないっていう感じがしたんですけれど。

まぁそうですね。それも考えていないわけではないんです。いくつか体験したことがあって。うちが雑誌に載ったときがあったんですね。当然ながらご来店されるお客様が増えたんですよ。で、じゃあそのお客様がもう一度この店にいらっしゃったかというと、いらっしゃらないんですよ。

雑誌を見て来てくださるのはありがたいですけど、その雑誌とかを見てくる人たちってどういう人たちなんだろうっていうのを想像したときに、僕たちがカウンターを挟んでお話しして、くつろいで、コーヒーを楽しんで帰っていかれるお客様なのか?という。そういうところからの必要性を感じなくなった。

だから外へ出て行く場所っていうのも、ここら近辺のイベントに出てるだけなんですよ。お店の前を通る人は見ますけど、通ってない人や世田谷周りの人にアピールして、あとは近所だから行ってみよう、っていうのだけを待つみたいな。





──そういった経緯がありながらも今回の貴重な機会をくださってありがとうございます(笑)あえて何か載せて欲しいことってありますか?もしかすると要望ないのかもなっていう予想はしてきたんですけど。

自分たちが何を考えているのかくらい、ですね。ブレンドしか置いてないし、ウィスキーが置いてあるのは、ただかっこいいからじゃなくて、ベースに喫茶店っていうのがあって。喫茶店っていうのは必ずマスターが作ったブレンドで、そこには60年代の若い人たちが憧れていた洋酒っていうのが置いてあったっていうのがあって、そこをちゃんとベースとしてやってますね。

ウィスキーはこういうものなんですよっていう会話だとか、美味しいけど、どういうブレンドをしてるんですかっていう会話をマスターと話して帰っていただくっていうのだけは、僕らのスタンダードとしてやりたい。
もちろん、なんとか農園のとか、スペシャルティコーヒーだとか、サードウェーブが何かとか全部知ってるんですけど、もう今更できないんですよね。僕がカットソーでニット帽被っておしゃれな感じで「なんすか」みたいなのって違和感たっぷりなんですよ。

好きな人たちが集まって、好きな人同士でお互いどういうことをしてるのかっていう交流があるっていう場になれば、それだけでいいかなっていう感じですかね。どちらかというとサロンっていうところをすごく意識してやっています。


ブレンドコーヒーをいただきました




インタビューのあと、弓削さんがアイスコーヒーとホットコーヒーを丁寧なドリップで淹れてくれました。

▼アイスコーヒー
香ばしさの印象が強く残りますが、エグみはなく、とっても飲みやすく、ゴクゴクと飲めてしまう。
飲み物の味が伝わりやすいように、薄はりグラスを使用しているところも出しゃばらないこだわりを感じます。

▼ホットコーヒー
コーヒーって飲んだ後に苦味だけが残るものもあるけれど、そういったのが一切なく、お砂糖とミルクを入れなくても飲める。誤魔化しがいらない純粋な美味しさ。
添えられたビターチョコとビスケットをいただきながら飲むとまた違う味を楽しむことが。

インタビュー・構成:ミズカ、写真:もんとみ




  • Beastie Coffee Club Tokyo(ビースティーコーヒークラブ トーキョー)


  • 住所東京都世田谷区太子堂3-25-3-1F
  • 最寄り駅京王電鉄・小田急電鉄「下北沢」駅 南口から徒歩17分(バス7分)


    京王電鉄・小田急電鉄「三軒茶屋」駅から徒歩11分(バス7分)

  • 営業時間
    只今サマータイム営業実施中 ※平日の12:00〜14:00はCloseとなります。


    月・火・水:9:00 〜 22:30 L.O.(12:00〜14:00 clo)


    金:9:00 〜 23:30 L.O.(12:00〜14:00 clo)


    土:10:00 〜 23:30 L.O.


    日・祝日:10:00 〜 22:30 L.O.

  • 定休日木曜日
  • HPhttps://www.beastiecoffeeclub.tokyo/

  • FBhttps://www.facebook.com/beastiecoffeeclub/
  • インスタhttps://www.instagram.com/beastiecoffeeclub/






ライター

ローカルデータ編集部

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