2017.09.27

【インタビュー】下北でオープンして10年目!レンタルギャラリー「gallery kasutela」芳野美春さんインタビュー

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下北沢北口にあるgallery kasutela(ギャラリーカステラ)はオーナーの芳野美春さんが運営するレンタルギャラリー。月曜日から水曜日の6日間で利用でき、個性豊かな作家さんたちそれぞれの色に染まります。ときには芳野さんご自身の作品が並ぶ日も!

今回は今のスタイルになるまでのギャラリーの歴史と、芳野さんが感じる地域への想いをお話していただきました。





▲作家さんのテイストによって印象がガラリと変わるギャラリー。入れ替え制で常に同じショップが入っているわけではないので、展示情報が知りたい時はホームページをチェックしましょう。



▲取材をさせていただいた日は、芳野さんが制作されたカラフルな作品が展示・販売されていました!


縁とタイミングが重なって辿り着いた下北沢


──まず、芳野さんとお店の歴史的なところから。こちらは何年目なんですか?

今年で10年なんです。
私の歴史としては、もともと保育のほうにいて、実習とかに行くたびに「ちょっと保育向いてないかも」って。自分には合わない世界なんだって着々と気づき始めて。
学生時代の一番最後に行ったところでようやく、「ここだったら私勤められるかも」って思えるところにご縁があって勤めたんですけど、結果的に4年くらい経つと、迷いがでてきて。どうしようかなって。
洋服が大好きだったので、そういう道も羨ましいなっていう気持ちが昔からあって。で、最終的に転職して。


──販売ですか?

そうなんです。昔からものを作ったりするのが好きで、たまたま原宿にボタンとかのパーツを作っているような卸し問屋の会社が、そのパーツを販売して、その場所でリメイクができるみたいなショップを立ち上げて。そこで1年くらい勤めて。そしたらたまたまご縁で、ミセスの販売を手伝うことになって。


──同じ会社で?

全く別の会社で。目黒で40年くらいやってた洋服屋さんに誘われて。自分のお店で仕入れてきて、それを販売するという個人でやっているサイクルを見せてもらえて、やっぱり楽しいなっていうのがあって。
そこも1年経たないくらいで、代官山でお店をやっている方に「ここでお店やらない?」って言われたんですよ。





──その方が出資するからってこと?

出資まではいかないんですけど、場所を貸してあげるから、やってみたら?って言われたんです。


──なんかすごいですね。縁とポイントとタイミング。呼び込むというか。

それもあるかも。今ここでお店をやっているのも本当に縁でしかなくて。代官山に誘われて、当時その辺のエリアの人の動きとか、街の感じも知っていたし、ここで自分が本領発揮してお店を出したとしても、家賃を払っていける自信は持てないなって。結構広さも今の店の三倍くらいあって、ちょっと難しいかもって思って。


──そうですよね、あの辺は。

でもやっぱりチャンスな気がしたので、逃したくないっていう気持ちもあって。
たまたまその時付き合っていた彼(後のご主人)に相談をしたら、ここが彼の実家でもともとは魚屋さん。閉めてずっとお店をやってない場所だったんです。
それで、だったらうちを使ったらいいじゃないかっていう話になって、身内から借りるっていう形で貸していただけることになって、魚屋はガレージみたいな感じだったので、自分たちで柱を建てるところから始めて。


──え?柱ってどこの柱?躯体からってこと!?

はい(笑)主人は植木関係の仕事をやっていて、屋上緑化とかがメインなんですけど、工事系の仕事もちょっと絡んでるから、そういう方にご指導いただきながら。オープンの朝まで壁塗ってました、私。このライトは魚屋の時のままです。もう老朽化が進んで、あと1本ダメになったら新しいのに変えようかなと思って。


──でも内装にというか、お店に合ってません?

合ってるんです。このライトとたまたま譲り受けたドアに合わせて窓枠とかも大工さんに全部作ってもらって。



▲工事中の様子。


▲魚屋さんがギャラリーに生まれ変わりました。右上のライトが、魚屋さん時代から使われているもの。レトロな風合いが素敵ですね。


──話を戻すと、じゃあ、言い方悪いけど代官山を蹴ってこっちに?

そうなんです、それがきっかけで。彼のところで貸してもらえるんだったら他でやるよりずっと心強いし。


──そうですよね。現実的な感じはしますよね。

サイズ的にも街並み的にも、私はキャラ的にも代官山じゃなくて下北沢だなっていうのが感覚的にあって、自分は気質的に庶民的な方が向いてるかなぁっていう。


──それまで下北っていうのは?

来てたんですけど、飲みに来てたか、何軒か決まった古着屋さんがあってそこを周るとか、そういう感じで。全部網羅してたっていうほどの下北通ではなかったんですけど。



スタートはセレクトショップから


──最初はいわゆる普通の物販で?

そうなんです。最初はここまでオリジナル全部じゃなくって、「selectshop kasutela」でスタートしていて。縫製とか独自でしかやってなかったので、どういう風にやろうかなと思った時にやっぱり自分の好きな洋服を集めて売ろうと思って。で、自分が買い物をしていたお店さんだったり、好きなブランドから仕入れさせてもらったり、委託させてもらったりする形をとってスタートしたんです。


──で、だんだん今の形態になっていった?

ところが(笑)本当に大変で。お店を開けた後からのウワーっていう流れがいろいろあったんです。
4月にお店を開けてその1年後に入籍して、結婚式を6月に挙げて。結婚式終わって子どもがいることがわかって「え!!」ってなって。結婚式が終わったら店をすごい頑張って盛り上げていく気持ちでいたのに。つわりもすごいひどくてどんどん具合が悪くなってしまって、体も痩せちゃって。


──そっか、そういうタイミングで。

ちょっと自分一人でお店を開けてっていうのは無理だって思って。でも開けたばかりで閉めたくない。で、一部自分の商品をおきつつ、誰かに使ってもらおうかなっていうのを最初は考えたんですよね。人を雇ってとも思ったんですけど、やっぱり経費とか考えたら難しいかなっていうのと、私もそこに立って、誰かの商品を売るとなると気を使うじゃないですか。
なので、もう箱貸しっていうことで、ギャラリーに切り替えて。貸しスペースにしてれば、空いた時自分もそこでお店を出せるし、翌年からすぐギャラリースペースを始めたんですよ。
それもたまたま知り合いから「そういうのをやるんだったら使ってみたい」っていうお話をもらったりしたので。


──あ、もう借り手がいたってことですよね。

うん。だから、じゃあやってみようと思えたし。その翌年に出産して、そこから貸しはじめて。





ゆくゆくはシェアショップとしてこの場所を盛り上げたい


──今10年やってこれているわけですから、サイクルがもう安定しているわけですよね。

そうですね。ギャラリーとして貸していくっていうのは、だいぶお声をかけていただいていて。私が将来的に目指そうと思っているのって、いちいち「誰か使ってください」って言わなくても、シェアショップみたいな形で決まった人たちと、ここの場所を盛り上げていくっていうスタイルに持って行きたいんですよ。


──共同経営っていうことですか?

そういうわけではないんですけど、今のスタイルのまま2、3ヶ月に一回来てくれる人が決まっていて、その人たちと交互にお店をまわしていくっていう風にしたくて。


──そのほうがお客さまもわかりやすいですよね、ギャラリーサイクルが。

今リピートして使ってくださってる方が何人かいるので、その方たちと一緒に引き続き使える場所になったらいいなって。もうちょっと増やして、コンスタントになるといいなと。今、率的には7割くらいはリピーターの方かな。


──じゃあもうそっちのスタイルに移るのも時間の問題。

と言いたい感じですかね(笑)


──言っちゃいましょう(笑)芳野さんの考えというか、それに共感してくれる人が集まってくるといいですよね、足がかりとしてじゃなくてね。

そうですね。インターネットで物が売れる時代ですから、固定費はできるだけおさえたいじゃないですか。あとは「お客さん今日来るかな」とか言いながら、毎日お店開けるっていうよりは、私は効率よく売上作れた方がはっきり言って楽だし、みんなにそうやってもっともっといい形でやっていってもらえたらいいなって。
自分が気がついたから、それを提案して、それに乗ってくれる人たちと使っていけたらいいなと思っています。


──借りる仕組みを教えて欲しいんですけど。新規で借りたい場合って、問い合わせいただいたあとに軽い面接を?

そうなんです。サイト上に申し込みフォームがあって、それを書いてもらうのが一番ベストで、そこに希望日程、簡単な略歴みたいなのが書けるようになっていて、申し込んでもらうのが一番いいかな。


──こういう人、こういうことをやっている人、ゆくゆくの固定化のためにこういう要素があったらいいなっていうのってあります?

なんだろうなぁ。
後々それで食べていくって言ったらアレですけど、それくらい真剣な人。やっぱり、簡単な賃貸物件みたいなところがあるので、あんまり変な人に来られても困るんですよ、正直。なので必ず面接を入れていて。テイスト的に自分の好きなものじゃなくても、人でジャッジしてるところあるかもしれないです。


──冷静ですよね。タイミングにしても要所要所の判断が。

ははは!本当ですか(笑)その辺はわかんないんですけど(笑)
過去を振り返ると、私何であの時あんなことできたんだろうって思うことがあるんですけど、多分私は楽しければとかそういうところで動いちゃうので、リスクヘッジというか、イメージできてないんだと思うんですよね(笑)


──代官山の件もそうだし、リスクを考えたうえで確実というか堅実。夢に入り込み過ぎず足元みているから、10年も続くんだなって思ったんですよね。目指す今後のスタイルも、夢物語に聞こえない。

本当ですか。できそうなところをキャッチみたいな。





下北沢、そして地域を盛り上げていきたい


──お店オープンされてから、少なくとも10年は見ていらっしゃる街の印象を聞いてもいいですか?下北ってどうですか?

多様性の強い街。本当に、いろんな人がいるし、世代も若い人からご年輩までいてっていうところ。


──何口かっていうのもそうだし、通りによっても人も違うし。

南口の方が今は割とチェーン店というか、大きい会社が出してるお店が多くなってしまって、こっちの西口・北口エリアは割と個人店が多い。小さいお店が多い印象がありますかね。あとは世代的にもこっちの方がちょっと年齢層は高い。
だから、一番街はここ4、5年くらいで結構同世代の方がお店を出されて。こだわっているお店が増えてきて、いい感じかなと思ってるんですけど。


──一番街が変化しているのを感じてる?

変化してます。昔は飲食とか、八百屋、魚屋、肉屋とか、本当に商店街っていう感じだったらしいんです。世代交代というか、結局オーナーさんがやっていたお店を誰かに貸すっていうような流れが出てきた。昔ながらの生活のための買い物をする場所っていうのが本当に少なくなってしまった。逆に言えば、話題性にのぼりそうなカップケーキ屋さんができたり、コーヒー屋さんができたり。


──それは芳野さん的には良い変化ですか?

寂しいけど、やっぱり商売をする覚悟を持ってやってるものとしては、いい流れになっていると思っています。だから、みんな頑張って続いたらいいなっていう気持ちも含めて。


──下北、地域を芳野さん自身も盛り上げていきたいっていう気持ちが強いって、おっしゃっていて、もっとこうしたらとか、予定とか具体的なことがあります?実は多いんですよ、下北って団結してるようで個だよねって思っている方が。

それはまさに感じます。もう少し団結したらいいのにとか…。だからこそもっと近隣と、地域とかかわりを増やしていき、町全体で盛り上げたいなぁという気持ちもあります。

私がやっているわけではないのですが、やなかまストリートマーケットというイベントを近くでやってるの知ってますか?3ヶ月に1回ライブと物販をやっていて。こはぜ珈琲さんとか、かまいキッチンさんとかがある、あそこの路地でやっているんですよ。私もたまに物販や、ワークショップで出店させていただいたりあの辺の界隈の人たちとは仲良くさせていただいてるんです。

そういう、このあたりの地域にかかわる人たちが始めた活動を見ていると、変な話、やっちゃったもの勝ちじゃないけど、やって実績つけていって、こんなことやってるんですっていったほうが、周りも巻き込みやすくて大きな動きになるのかなぁっていうことがちょっと見えてきたりしてます。


──あとは継続ですよね。

だからこそ私自身ももう少し積極的にお店をうまく利用して自分の子どもがもうちょっと落ち着いたら、ここで何か定期的にやれるようなことをやって、もっと多くの人たちを巻き込んでいけたら町を盛り上げていけるのでは?!と思っています。


──だってもう、下北の重鎮になりそうな感じ(笑)なんか、次世代の老舗候補みたいな感じがすごいする。

重鎮(笑)昔関わっていたのもあって、子どもは嫌いじゃないし、やっぱり子どもがハッピーな世の中じゃないと、世の中ハッピーじゃないと思うので。そういう風にしたいっていうのが漠然とある。何か地域の子どもにプラスになるような。
ここはレンタルスペースにしているけど、自分がここにいるときはいつでも声かけて、なんでも話聞くよ、そんな存在になれたらいいなっていうのは常に思っていますね。子でもたちとかにも、「なんかあそこ行ったら派手なおばちゃんいるよ」みたいな。




──あははは!(笑)

話聞いてくれたよ、みたいな。怖い人がいたら、あそこ行けば大丈夫だねみたいな。
どうなることやらですけど、そういう風な存在になったらいいなっていうのはありますね。


インタビュー・構成:ミズカ、写真:もんとみ(一部提供)






カラフルで、身につけてたらすごく元気が出るとか、そういうことがベースにある」という芳野さんの作品。子どもが創作するように、楽しみながら形にしていくスタイルで制作をされているそうで、のびのびと表現されている様子が想像できる作品ばかりです。先に素材を見に行って、これはこれにしたら可愛いというデザインが後から入ってくるから、イメージ通りのものができるんだとか。


▲独学で制作されてきたそうです。帽子に関しては縫製担当の方がいて、今はその方から教わっているんだとか。


▲帽子の中にはリバーシブルになっているものもあります。ネームタグと、子どもが自分で掛けられるように紐が用意されているのが、お母さんならではの気遣いですね。


▲ニットで編んだり、フェルトで貼ったりしたものをデータにしてプリントしたTシャツ。イラストでは再現できない、リアルな素材感が伝わってきます。


▲今後はターバンを増やしていくのと、カステラが一本入るバックを復活させたいんだそうです!

芳野さんのTシャツ、アクセサリー、キッズもの、帽子は近日再開予定のネットショップでもご購入いただけますよ。






ライター

ローカルデータ編集部

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