2017.11.12
【インタビュー】文化を生み出す活動を始動!デザインと音楽の融合「株式会社APiCA」川野智史さん、深雪さんインタビュー
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下北沢のレインボー倉庫内に事務所を構える「株式会社APiCA」は川野さんご夫婦が経営するartwork studio。2015年8月に設立し、フリーペーパー「ART WiTH!」の発行やチラシのデザイン、イベントでの物販などを手がけています。
今回は長く音楽関係にたずさわっていたという代表取締役の川野智史さんと、デザイナーの川野深雪さんをインタビュー。
▲代表取締役の川野智史さんと、デザイナーの川野深雪さん。
誰かに何かを伝える一つのツールとして立ち上げた
──お二人での活動っていうのはどのぐらい前からされてたんですか?

音楽をやっていたっていうだけで、何か音楽のことやればいいじゃんみたいな感じで(笑)特に何も考えないで(会社を)作ったのが、2年前の8月なんですけど。そこから彼はイベント、私がデザインを。リンクするところ、しないところもあるんですけど、それぞれの部署で一人ずつやっているみたいな感じです。
──最初からその2つを融合させようっていうわけではなくて、たまたま持ち寄ってという感じだったんですか?

誰かに何かを伝える一つのツールとしてイベント広告デザイン会社だったら、2人で力を合わせてできるっていうことで始まった。

文化を特集するフリーペーパー
──つい先月くらいの話ですよね。

一つはレーベルの立ち上げで、音楽業務の物販というか流通関係。もう一つはそれを外にアウトプットしていけるフリーペーパーっていうのを自分たちの会社の作品にって、やっとできたのがつい最近です(笑)それまでは全然もう、お互い何の仕事をしているのかよくわからない。

▲レーベル「TRANCE FACT」から出ているバンド「shuhari」。

▲バンドTシャツなどを、その場でライブプリントしている様子。

日本って結構文化とか芸術に対してあんまり積極的じゃないところもあるなって思っていて。気軽さが日本ってあんまりないじゃないですか。そうすると広がらないんじゃないかなってすごく思っていて。
わからない話もできるだけ敷居を低くして、芸術や文化に触れられるもの、素人でもわかる、ちょっと聴いてみようかなって思わせるものはなんだろうって思ったのが、フリーペーパー製作の発端で。
アートとかファッションとか、食べ物もそうなんですけど、文化と呼ばれるものを特集しながら話を聞くっていう、読みもの的な試みの第1弾。


──音楽って具体的にはどんな活動されていたんですか?

一つの大きなきっかけが、自分が何もできなくなった時に人の音を出すようになって、そういうのも面白いなと思ったんですよね。音響関係の仕事もやってたりして。自分の表現ではなく、人の音を自分のフィルターを通して誰かに伝えるみたいな。
──バンドだったり、DJだったり、プロデュースや演出側だったり。いろんな立場になって音楽と関わってきた感じですよね。

最高の条件が揃った場所
──活動場所をこちらにした理由っていうのは?

彼女は受けの仕事ばっかりが嫌で、ユーザーと繋がっていけるようなデザイン。リアクションがすぐ返ってくるデザインがやりたいっていう話をしていて。お店や飲食店でそこを窓口にお客さんと繋がっていけるような場所というか。
僕だったらイベントができます、セミナーやりますって言ったらどれだけの機材が必要か。じゃあそういうクリエイターの人たちが集まって、なおかつイベントもできて食事もできるところ。
ちょうど僕らが会社を立ち上げると同時くらいにここができて。そういえばこういうところがやりたいんじゃなかったっけって。もう最高の条件だなって思いましたよね。


▲レインボー倉庫内のカラフルな事務所外観と内観。自分たちで好きに内装を変えられるのもこちらの特徴。

▲レインボー倉庫の屋上でアコースティックのイベントも開催。
──他の条件も揃ってるわけですもんね。



──ゆくゆくはご自身たちでこの形を作るつもりで?


自分たちの働きが、誰かのためになる
──お2人の得意分野って別々じゃないですか。逆に共通している部分ってどこなんですか?

3本の柱がなかった状態の時って会社自体が大変で、屋根を作りたいと。作らないとダメなんだなと思ったんですよ。人の役に立っていないと会社って生き残っていけないんだろうなって思って。
会社として人を抱えられて、屋根になってその人たちの雨風しのげるような体制を作らないといけない。屋根は3本以上じゃないと立たないじゃないですか(笑)なので、5本の柱を作ろうってなったのはそこなんですね。
それが「ART WiTH!」っていうフリーペーパーに集約されていて、じゃあ「ART WiTH!」ってなんなのかというと、文化を作る。ファッションになったら文化だろうなとは思うんです。ファッションってどうやって生まれるかっていったら多分音楽とアートなんですよね。音楽って目に見えないもので、内面を揺さぶっていくものだと思うんですけど、そこに対するアートワークで一つの世界ができて、第3者に伝わっていって一つの文化に。
今なんか気持ち悪いのが、例えばファッションでもスケートやらない人がスラッシャー着てたりとか。ローリングストーンズのTシャツをローリングストーンズと思ってなくて着てる人とか。ああいうのはすごい違和感で(笑)ははは。

音楽にも、アートにも国境はない
──わかります(笑)


知らない人たちに届けるのが僕らの仕事だなって思うんですよね。知らない人たちに興味を持ってもらって楽しんでもらう。そのために手に取ってもらう。だから紙にしたんですよ。WEBだと自ら興味があるところに取り込んでいかないと情報が得られないので。

──あの、個人的にすごく聞きたいんですけど、私は音楽好きなんですよ。音楽に全く興味がない心境ってどんななのかなって。


──音自体に反応してしまうってことですか?

あと音楽をやってる人たちが自己満足の人ばっかりだって思ってたんですよ。すごい悪い言い方しちゃうんですけど、「かっこいい俺を観てくれ」みたいな。本当に無いわ…って思っていて、それをずっと引きずって、いい音楽っていうのがなかなか聴ける状態じゃなかったんじゃないかなって思うし、それを教えてくれる人もいなかった。

──今はどうなんですか?

自分で良いっていう自分の意見に対して怖かったのかもしれないですね。アートもそうなんですけど。人の目とか気にしたり、ブランド寄りに考えてしまうような性質だったのではないかなと思っていて。音に対してすごく違和感というか、単純に歌をやってる人なんか、チャラいなって思ってたんです(笑)
──へぇ〜、面白い。こういう音楽のとらえ方、初めてじゃないですか(笑)


いいものに触れれば、きっといい人に出会えたり、いい人間になれたりしていくと思うんですけど、やっぱり悪い音楽って悪い方に行ってしまう。やめた方がいい人もめちゃくちゃいますね。だからそういう人が出てもしょうがないなとは思います。
だからこそいろんなプレゼンの仕方は散々してきたし、いい音楽を僕自身はアウトプットしていきたいと、一応考えてはいますね(笑)ははは。
──身近にこういう方がいてよかったですよね。それこそ知らない人に広めていくっていう、その指針がすぐ近くにいるっていう、ね。



──まずは突破するのはここ(深雪さん)っていうことですよね。


──そこが面白いかもしれないです、このフリーペーパーの奥の底。誰が作ってるかっていうところが。



▲フリーペーパー「ART WiTH!」。
──なんか逆にあまり小慣れて染まらないで欲しい。


──その感性を持ったまま作っていって欲しい(笑)

──このあとの柱の2本っていうのはもしかすると全然違うことっていう可能性はあるんですか?

──よりカルチャーを視覚化していくみたいなことですよね。うまく回るような土台作りをできたらっていう。


──文化=ファッションで、ファッションって見た目というか視覚的要素が強い。だけどそこにはちゃんと中身があって、外見と中身が一緒で文化になる。



▲終始気さくに丁寧に一生懸命お話ししていただいた姿が印象的でした。
──そうですよね。そういうの嫌いですもんね(笑)

──でも中身があるかないかってわかりますからね。伝わっちゃうから。


だから何でもやりまっせっ!ていうのが一番良くないんだろうなって思ったりしますね。言いがちなんですけど(笑)
インタビュー・構成:ミズカ、写真:もんとみ
- 株式会社APiCA
- 住所東京都世田谷区北沢2-19-5 レインボー倉庫3 ♯014
- 最寄り駅京王電鉄・小田急電鉄「下北沢」駅 南口から徒歩1分
- URLhttps://www.facebook.com/apica.inc/